戯言と作品レビューや分析のブログとその時の思いつき。

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武梨えり展に行った。



もう既に会期は終了していますが(2009.8.1-2009.9.6 於青山GoFa)、アフターレポートにも価値があるさという事で書いてみます。

■会場
 GoFaはマンガ関係の展覧会を数多くやっているこじんまりとしたスペースに原画を中心とした展示。過去にはよつばと展などをやっていた。
 ABCこと青山ブックセンター本店の横で、最寄り駅は表参道になる。
 会場入り口は少しわかりずらくて、ポスターの貼ってある鉄扉の先の階段の先が入り口になっている。エレベーターを使うと、どこかのオフィスに入って気まずいので注意が必要。

■原画について
 展示されているのは、まだ未完成の原稿。ベタ塗りやトーン作業背景処理がされていない段階のものが展示されている。
 というのも、この未完成の原稿をスキャンしてPCで最終的な形にしているらしく、完成原稿はデータでしか存在していない(*)。ちなみに、完成原稿のコピーもバインダーに閉じられているので比較しながら見ることも可能だった。
 髪の毛なども、筆のタッチが必要な部分のみ書いて、あとは白く抜いてある。修正などもPC上でされるのだろう、ホワイト修正なども乗っていない。なので白と黒のコントラストが鮮やかだった。

 TAKE MOON時代の作品も展示されていたが、こちらはいわゆるペン入れした原稿にベタを塗ったり、トーンが貼ってあるおなじみの完成原稿だった。シエルのカレー好きという定番のネタ設定を、いじりつつも、ちょっとした青春の1ページに変換する手際は鮮やか(私が行ったのは3期で、この期間中はこの話が展示されていた)。カレー=人にはいえない趣味みたいな解釈で、好きな人を前にして戸惑ったり悩んだりする、この狙い済ました暗喩の使い方は流石。

中学生時代小学生~中学生時代のマンガについて
 ここでしか見られない作品として、小学生だか中学生だかに作成された肉筆回覧誌とそのコピーが置いてあった。展覧会のお品書きには、「・小学生の頃より描き続けている、ライフワークとなっている漫画の展示。」とある。

 ネコくんが主人公で、妖精と出会い、半ば巻き込まれるように異世界を旅をする。ドジばかりの妖精が魔法を唱えるというちょっとドタバタがあったり、浦島太郎のように妖精の館でしばらく過ごして、やがて別れがやってくるというようなお話。
 小学生なんで絵も上手くないし、技術的に秀でているわけでもない。一コマだけカラーにしてみてあとは力尽きたり、線を引くときに物差しの間にインクがたまって生じる流れ線があったりする。だけども、必死に描いている感じは伝わってくる。

 マンガが好きな女の子というスタートから「マンガ家」に至るまでの間や、共通点がないんだろうかと考えてしまう。

 ラストで画かれる妖精との決別のシーンではコマにはみ出るようにしてくさいくさいと連呼していたり、魔法少女ものというジャンルを意識したシーンがあったり、この「距離感」は武梨まんがの距離感だなあと思うが、うがちすぎな気がしないでもない。
 魔法少女だったり、日常世界と異世界の混じり合いだったり、ドタバタ感だったり、最後は「決別」だったりといったモチーフが同じだよなあ。って、これは完全にうがった見方。

 ただ、ずっと「読者」に向けて描き続けてきた事はいえるだろう。続きものになっていたり、裏表紙には閲覧隅を示すのだろう赤い判子がずらっと押してあったり、「読者」に向けて描いていたことがわかる。

【10.20 誤字修正。このパート修正・加筆しました。カトゆーさんに、中学生時代のマンガ!と紹介されたのですが、あくまでも小学生時代からのライフワークという表記であって不正確な表記だったかもと訂正しました。】

■コミュニケーションノートについて
 会場にはテーブルがあって、その上にコミュニケーションノートがおいてある(**)。

 さて。当たり前だがこの空間には『かんなぎ』や武梨えりを好きな人しかいない。大阪から来たと書いている人が4~5人はいたし、仙台から来た人も2~3人いた気がする。一人、沖縄から来たと豪語していたが。

 JKです。中学生です。とか書いている人もいた。で、漫画家志望です!とか書いてあって、横にがんばってるけど下手な絵が描いてあったりする。クラスで、『かんなぎ』を広めようとしているんだけど、周りの人たちはあまり耳を傾けません…というJKだかJCの意見。

 で、会場の横には同時に武梨えり(小学生)が描いた下手なマンガが置いてあったりする。漫画家志望の彼女たちはすごく勇気付けられたんじゃないだろうか。

 作品。というのは人に影響を与えることができるという当たり前のことに気付かされた。少なくとも、日本中から東京に集まってくる程度には。子供達にペンを取らせようと決意する程度には。こうやって、「マンガ」は脈々とつながっていく、のかもしれない。

 今、武梨えりさんは病気療養中という事で、そういった類のコメントが多く寄せられる事になる。しかし、「好きに書いてくれればいい」だとか、「いつまでも待っている」だとか、「このままで終わるのは嫌だ。」とか。誰に示し合わせたわけでもなく同じ文面を必死に考えて送ってしまうおれ「達」がたくさんいて苦笑いをしてしまう。

 これが、「作品」の力なのだ。と思った。

 一つの作品を語るとき、物語の内容を語るような語り口は多い。もしくは、物語の環境を語ったりだとか、物語の法則だったりキャラの法則だったりといったる語り口をとってしまう。だけれども、そういう語り口は、こういった「作品」の力を語っているとはいえない。
 すごく素朴な話だけれども、商業的に本を出版してアニメ化をするという事は、日本全国津々浦々に万人単位で読者を手にする事だ。そういった薄い拡がりの中には、それこそ自分の人生を「作品」の力によって変えられてしまう人もいるだろう。確率論的にそういう強い影響を受けてしまうひとは出てくる。だからこそ、「規模」の力は大事だ。同人と商業の差異は物語内容にあるわけではなくて、対象となる範囲や「規模」の違いが大きいように思う(環境制約として「資本」の有無はあるとは思うけれど)。
 よく、マンガ家が、ファンレターが励みになるとか書いてるけど、こりゃやる気が出るわ。「作品」の「意味」そのものじゃないか。そんなことを感じた。

 ネットやリアルに限らずそれこそいたるべきところでこういったコミュニケーションは行われているのだろう。
 偶然、武梨えりの展覧会で発見して舞い上がってしまった、という話。
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【10.5 文書構成変えました。ラブプラスの解説部分を追記に移動。】

ラブプラスを買ってみた。

最初はできの悪いギャルゲーのような印象しかもてなかった。シナリオもキャラクターもよっぽど他に優れたゲームが存在している、と。が、次に書いたような経験をしてからこの「ゲーム」の評価が大きく変わった。与えられた物語を受け取るような姿勢でプレイしていてはいけなかったのだ。

昼休みにラブプラスを起動した。昼休みの残り時間は10分程度で、時計を睨みながら、「彼女」を学校の庭に呼び出し他愛の無い会話をした。
さて。問題なのはDSを閉じたあとだ。あたかも、昼休みの間にちょっと抜け出して今目の前にあるそこの庭で彼女と会っていたような錯覚に襲われたのだ。

こういった経験や、ネット上に飛び交う「彼氏」としての発言をみるにつけ、ラブプラスの本質はRPGなのではないかと思うようになった。
『ラブプラス』には非電源ゲーム的な、役割を演じるという意味でのロール・プレイング・ゲームという側面が強いのではないか。


先に引用したAmazonのレビューでの「彼女ができました」発言にあるように、『ラブプラス』のプレーヤーは「彼氏」という役割を演じている。テーブルトークRPGに当てはめれば、ルールブックが『ラブプラス』、リプレイがネットでの書き込みということになるだろうか。

実時間とシンクロさせないプレイも可能にはなっている。たとえば時間を飛ばせるスキップモードだったり、DS本体の日付情報を進めたり。だけれども、それでは現実を侵食してくるような『ラブプラス』の醍醐味は味わえない。

誕生日のイベントにしろ、クリスマスのイベントにしろ、来るべき日を1日1日待つ。そうやって、自分の現実を固有結界で包み、「彼氏」を演じる必要がある。

『ラブプラス』は、彼女ができるゲームではなく、彼氏になれるゲームなのである。


Amazonや2ちゃんねるの書き込みを見ていて、ラブプラスを絶賛している人ほど「彼氏」としての自覚を持っている印象を受けた。逆にいえば、そうやって自分が「彼氏」を演じる事ができなければ、これほど退屈なゲームも無い。

このゲーム内での体験は素材でしかなく、そこから豊かなリプレイを創造する事こそが「ゲーム」の面白さなのではないか。(ひぐらし/うみねことネット上の推理といった例もある)こういった物語への信頼感のなさとユーザーへの信頼感の高さは「ゲーム」らしい。ニコニコ動画のゲーム実況を見ていればわかるけれど、ゲームの面白さを発見するのはユーザー自身なのだ。

そう考えれば、『ラブプラス』の新規性が明らかになるように思う。

『ラブプラス』は高度なごっこ遊びだ。そういった意味で『ラブプラス』には高度な資質と想像力が求められている。DSに香水をかけるなどの行為は、変態行為に思えるかもしれないが、その方向性がラブプラスの正当な楽しみ方であるように思う。
「彼氏」になりきったものの勝ちなのだ。

(追記有)
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