戯言と作品レビューや分析のブログとその時の思いつき。

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 ようやく最近「月姫」を手に入れて、「fate」はセーブデータがいい所で飛んでしまい対策に悩み、「DDD」は唸りながら二巻まで読んだというTYPE-MOONというか奈須きのこ初心者な自分である。
 あまり同時読みもよくないと思って遠慮していた「空の境界」なのであるが、映画がはじまったので、テアトル新宿まで観にいった。
 去年の冬コミでこれの紙袋を持っていた人を大量にみかけた気がしているのだが、もう1年経った?はやい。

 「俯瞰風景」は、九十年っぽい感じが終始しているうちに終わった。
 はじめてみるんだけど、デジャブ感がある。もはや懐かしい感じさえする。
 自殺する少女というモチーフも、「謎」を「謎」のままで引っ張っていくような方法も。
 根底に流れる世界への絶望も。
 ひとつの時代の様式を感じさせる。

 一言で言えば、変なノスタルジーを感じているうちに、消化不良でなにか引っかかったまま終わってしまった。

 気になったので、ネットに転がっていた初出の空の境界を読んでみる。「俯瞰風景」と次の「殺人考察」まで。
 (この作品は、1998年~同人サークル「竹箒」のウェブページに掲載。2001同人出版。2004商業出版。という経緯を持つ。現在は、「竹箒」上からは削除されている)

 さすがに少しは理解できた。
 しかし、小説版にして作者がこう言い張っているのである。

 「動機が「おもいっきり訳の分からない話にしよう」というものだったんです。」「”困難なものでも読み通してくれる人”にあてるべきだと思い、第一話でふるいにかけるような事をしたんです。」(空の境界「俯瞰風景」パンフレット・奈須きのこインタビューより)

 映画版ではさらに振り絞っている印象がある。
 まずは、両儀式とは中学校からのクラスメートであるとか、蒼崎燈子のつくる人形に魅せられて黒桐が彼女の事務所に転がり込んでいるといった基本的な説明が無い(か、わかりにくい)。 次の第二話「殺人考察」が式と黒桐の馴れ初めの話なので、それを待てという事なのかも知れないが。

 それに次のような独特の用語系での思弁がセリフとして挟まってくる。 小説だと読み返せるけど、映像だけだと流れていくだけになってしまう。

「時の経過とは一種類ではない。朽ちていくま
での距離は、それこそ全てに不均等だ。ならば
人間という一固体と、その一固体が持ちえた記
憶にも、朽ちていく時間の差というものがある
のは道理だろう。
 人が死ねば、その者の記録は消えるのか? 
消えないだろう? 観測者(オボエテイルモノ)が残って
いるかぎり、あらゆる物は無へと突然に消失す
るわけではない。無へと薄れていくんだ。
 人の記憶、いや記録か。その観測者がそれを
取り巻く環境であった場合、彼女達のような特
異な人種は死後も幻像として街を闊歩する。
 幽霊とよばれる現象の一部がこれだ。」




 後は映像化はしにくい作品だとは思う。次の「殺人考察」と比べてもこの「俯瞰風景」は特にそうだろう。
 たとえば、少女たちの自殺という具体的なビジュアルイメージが、自殺という活字が持っているという禍々しさを逆に削いでしまっている。

 また、「飛行」するか「浮遊」するか。「彼女」はどちらを選択するのか。これがこの「俯瞰風景」のキーになる。
 ただ、「飛行」・「浮遊」という言葉の配置が、ビジュアルイメージでは再現されない。
 言葉が何を指し示すのかは曖昧で、反対概念を指し示すことで立体的に意味を把握できる。「着陸」と向かい合った時の「飛行」ではなく、「墜落」と向かい合った時の「飛行」でもない。「浮遊」と向かい合った時の「飛行」。そして「彼女」はそのどちらを選択するのか。
 そして、飛行・浮遊という言葉に作者が込めた暗喩とは何か。以下では、いくつか小説「俯瞰風景」を引用する。



 何故、「浮遊」/「飛行」しなければならないか。それは「俯瞰」した風景を得るためだ。「俯瞰」せざるを得ない状況に自分たちは置かれている。

「しかしその反面、人間は誰しも俯瞰の視界で
生きている。身体的な観測としてではなく、精
神的な観測として。その個人差はまちまちだ。
肥大した精神ほどより高見を目指すだろう。だ
が、それでも自らの箱を離脱する事はない。
 人は箱の中で生活するものだし、箱の中でし
か生活できないものだ。神さまの視点をもって
はいけない。
 その一線をこえると、ああいった怪物になる。」


 世界と自分がズレているという感覚。本当はこんなはずじゃなかったのに、という後悔。理想の中の自分とのズレでもいいかもしれない。ともかく、何かからズレている自分で果たしていいのだろうかという苦しみ。それが「逃走」を生む。

「逃走には二種類ある。目的のない逃走と、目
的のある逃走だ。
 一般に前者を浮遊と呼び、後者を飛行と呼ぶ。
 君の俯瞰風景がどちらであるかは、君自身が
決める事だ。だがもし君が罪の意識でどちらか
を選ぶのなら、それは間違いだ。我々は背負っ
た罪によって道を選ぶのではなく、選んだ道で
罪を背負うべきだからだ」


 「飛行」/「浮遊」がもっている必然的な帰結。

「そして、僕はさっきまでの夢を思い出した。
 蝶は最後には墜落してしまった。
 彼女は、僕についてこようとしなければ、も
っと優雅に飛べたのではないか。
 そう、浮遊するようにはばたくのなら、もっ
と長く飛べていたはずだ。
 けれど飛ぶという事をしっていた蝶は、浮遊
する自身の軽さに耐えられなかった。
 だから飛んだ。浮くのをやめて。」




 奈須きのこ作品では、同じようなモチーフが違う文脈で語られていく。
 「生命に関わる大事故」「御嬢様」「殺そうと思った相手と恋愛関係(攻撃と性。ってフロイトっぽい)」「記憶喪失」。

 また、ひとつの単語を読み替えていく事によって、というよりは過剰な意味づけを一つの言葉や行為に負わせることによって、新しい物語世界を構築するというのは彼の特徴だ。
 「俯瞰風景」では、「浮遊」という言葉を読み替えていく。「飛行」という言葉を読み替えていく。そこに、現代の時代に対する行きづらさの処方箋としての意味をもたせる。そして、物語の中で行動の中でそれを思弁する。そこに説得力を与えて、現実という世界を切り開き、時に、私たちにカタルシスを与える。

 DDDにおける「A型異常」に対する独特な解釈。そして、野球でピッチャーとバッターが戦うという事の意味づけに百ページ以上を費やす。「夢」と共に生きた少年時代を青年時代の自分が振り返って、そして青年時代の自分がそれにケリをつけるために白球を握る。野良野球という物語の中で、生きることの困難さを語る。独特な世界の構築。面白さ。

 俯瞰風景ではそれは成功しているとは言い難い。がそもそも空の境界という作品は「七部構成」なのである。ここで展開された用語系がどのように次の物語で展開されていくのか、活目して次回を待つことにする。っていうか、小説版は刊行されているんで、さっさと読め(自分)。

 あとは、とりあえずいろいろ予習したので、二度目をそのうちに観にいこうかと思う。


で、二度目を見に行った。
ハーゲンダッツをめぐる照れくさいラブストーリ;空の境界「俯瞰風景」

07.12.9追記。
あと、燈子と黒桐とのなれ初めの話、劇中で触れてありました。



関連リンク
竹箒
竹箒日記
劇場版「空の境界」

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カテゴリ:評論
タグ: 奈須きのこ 空の境界
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前のエントリ;ネットは《非郵便的》か。



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フェラガモ 靴  【2013/07/03 Wed】
空の境界「俯瞰風景」解読の為の予習。::クリティカルヒット
[ フェラガモ 靴 ]
クロムハーツ  【2013/10/23 Wed】
空の境界「俯瞰風景」解読の為の予習。::クリティカルヒット
[ クロムハーツ ]
-  【2013/11/26 Tue】
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