戯言と作品レビューや分析のブログとその時の思いつき。

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二度目。一度目と同じくテアトル新宿にて。

 異常な男性比率。カップルで来ていても、組み合わせが男女ではない。男男。女女。野郎どものための映画なのか。

 面白かった。

 自分の中で何が描かれているのか、何が描かれようとしているのかを頭の中にいれて、その上で見ると、身体の中があったかくなるような感覚に包まれる。要するに、これって照れくさいラブストーリじゃねえのという事に気がついてしまう。

(以下、ネタばれ全開につき。)

 原作「俯瞰風景」から追加されたエピソード。
 黒桐が霧絵にやられていることを感づいた式が霧絵に戦いを挑むも惨敗。義手を失って、その後片手でコクトーに貰ったハーゲンダッツを食べる。雨に打たれて進み、雨だか涙だかわからない表情の式。

 黒桐からしてみればただやられて眠りこけ気がついたら目が覚めてコーヒーをいれて講釈をたれるだけなのだが、式にしてみれば自分の中にある黒桐の存在に気がついて行動を起こす。そういう話である。

 とはいえ黒桐は自分が助けられているとも気がついていないわけで、表面上は何も変わらない。ただ、少しいつもとは違う式を発見するだけだ。ハーゲンダッツが一つそのままだからと「今日は泊まれ」といって、「君は女の子だから」と切り返す。

 少しの時間。一晩を一緒に過ごしたい。ということだけを伝える為に、たかがアイスクリームを通してでしか伝える事はできない。かたや、自分の命を捨てる程度には黒桐の事を大切に思っているにも関わらず、式は照れている。原作の方には少し詳しく書かれてあるが、事故で記憶を失ってしまった式にとって黒桐はほとんど唯一の自分を知っている存在だ。
 にも、関わらず照れる。いや、それだからこそ生じる照れなのかもしれない。

 やたら不器用な女の子。そこいらの微妙な機微を感じてときめくという、そういう照れくさいラブストーリー。映画が付け加えたエピソードは、式の中の行動の中に黒桐があるのだという事をしっかりと示そうとしている。

「そうして私は生きている実感も持てないままで、かつての私らしい行動を繰り返す。(両儀式)」

 世界と自分との関係。
 それを「地面に足を付ける。」「飛行。」「浮遊。」「墜落。」といった喩えで表現しようとしている。喩えといっても、フィクションの世界なので実際に少女達は「浮遊」し「飛行」するわけだけど。肉体が重力を超越できるかどうかは微妙だが、少なくとも魂は実体を伴って浮遊をすることができる世界である。

 少なくとも物語の一時点においては、式が「飛行」で霧絵が「浮遊」を担っている。かたや、自らの中に狂気を秘めつつも生きている感覚がつかめない少女。かたら、長い療養生活の中でベッドの上で空を見つめる事しかできない少女。
 目的のある逃避としての飛行。目的のない逃避としての浮遊。とは作中で、蒼崎燈子が与えた定義だ。

 「俯瞰風景」とは何か。地に足のついた風景では我慢がならない。身の丈にあった今の生活に満足している小さな自分ではなくて、かなう事のない夢・無限の欲望にかられた自分を求めてしまう。今の自分は偽物であると思った瞬間に、「俯瞰風景」は現れる。

 こういった「俯瞰風景」は誰しもが持つ物だろう。一人一人が持っている「俯瞰風景」を我が物にしようとする為にもがき苦しむ。それは人が大人になるときに誰もが通る通過儀礼だと、少なくとも教科書の類いは語るだろう。

 しかし、その地に足のついた現実世界が全快の見込みもないような病気の少女だとする所に、この作品の持っている救いようの無さがある。それに輪をかけるのが、「飛行」や「浮遊」を喩えではなく実体としてとらえるということだ。
 観念を実体としてとらえる事で、主人公達のアクションの中で観念の戯れを展開してみせる事が奈須作品の特徴で、ただのアクション活劇やただの思弁が到達できないような高みに私たちを連れて行ってくれる独特の索引力に必要不可欠な類まれな作劇手法だと信じて疑わない。が、「俯瞰風景」においてはタチが悪い。

 霧絵は物語のラスト、車椅子を自分の手で動かしている。彼女はマンションの屋上から、「浮遊」しようとして「墜落」した。一言で言えば、彼女は飛び降り自殺をした。世間のニュースが伝える事によれば、病の苦しさに耐えかねての自殺。しかし、それはこの現実からの「俯瞰風景」を得る為に彼女が下した決断であって、死は結果でしかない。喩えとしての「浮遊」とリアルな「浮遊」が一致せざるを得ない霧絵というキャラクター設定。窓から空を見ていることしかできなかった少女。自分自身の絶望が自然と「俯瞰風景」という形を取る。
 いや、タチが悪い。そのタチの悪さが必要とされた時代。

 一方、式は幻想が実体化した(?)ビルの合間に「浮遊」する霧絵をそのナイフで突き刺す為に見事な「飛行」を我々に見せてくれる。しかし、その「飛行」も結局は地に足をついた物ではなく、そこからの「逃避」でしかない。タチが悪い。「浮遊」と「飛行」をわける「目的」とは何か。

「そんな憧れは、私の中にはないんだ。生きてる実感がないから、生の苦しみなんて知らない。ああ、本当はおまえの事だってどうでもいいんだ(中略)でも、あいつを連れていかれたままは困る。拠り所にしたのはこっちが先だから、返してもらうぞ(両儀式)」

 だから、彼女は「飛行」する。
 結局は、ハーゲンダッツに始まりハーゲンダッツに終わる物語ではある。

「なんか、そう聞くと三文小説みたいですね(黒桐幹也)」



一度目を見た後に書いたもの→空の境界「俯瞰風景」解読の為の予習。


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ハーゲンダッツをめぐる照れくさいラブストーリ;空の境界「俯瞰風景」::クリティカルヒット
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