数ヶ月ぶりに古本屋に行くと、棚が随分入れ替わっていて適当に買い込む。本、が寝床の約半分を侵略していて、この前などは生まれて初めてベッドの上から床に転がり落ちてしまったのだが、あまり気にしない事にしたので、気にせず買う。
ファミ通連載マンガシリーズで、鈴木みそ『おとなのしくみ』、みずしな孝之『いい電子』。共に4巻目。3巻目を買ったのは共に数年前だった気がするんだが、ちまちまと買い集める。というか、エンターブレインの本は買いたい時に変えないのでしょうがない。このシリーズの最高峰は、羽生生さんの『アレ』だと信じて疑わない。子どもの頃、あのガンジスに浮かぶ桃太郎の桃色の顔色を見たときの衝撃は忘れられない。
鈴木みそという人は、取材をして、その情報を味付けして見せるという読み物系のマンガを描く人で、アベレージが高く、たまに傑作もあるというコラムの名手。西原理恵子とかと同系統の読み物系まんがの系列。
最新刊の『銭』は物語形式を取り入れて情報密度が相当にゆるい。まあ、それだけ『大人のしくみ』なり前作の『あんたっちゃぶる』の密度が濃いという事なんだが。連載開始当初では、色紙の上にまんがをかくという恐ろしく手間がかかりそうな事もしていたりする(ホワイト修正が効かない一発勝負)。
で、読み返していたら、『大人のしくみ』1巻目で仕事イヤイヤ病にかかっていた。「仕事イヤイヤ病が再発したので静養中/この病気にかかると机の前にすわっていられなくなる」と呟きながら、エヴァンゲリオンの紹介などをしているのが時代。4巻は2001年いっぱいまでが収録されているので、随分長い間魂削って仕事をして、『銭』の別路線につながる、と。まあ、そこまでリニアに捉えられない気もするが。
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ついでに『課長・島耕作』を読み返してみたりする。筋はほとんど忘れてしまったので、新鮮な気持ちで読む。あー、ここで裸でプールですかという感じ。久しぶりに読み返すと、非常にいやらしさというかマッチョなものを感じた、のが新発見だった。東南アジアで、「おれは現地の人と同じものを食べるんだ。」といって、屋台にスーツでかけこむ島。笑顔で打ち解ける現地の人と日本のビジネスマンという図式とか、ちょっといやらしくないか。
あと、島が困ったら女が助けてくれる世界観も徹底されている。というか、島が自分で努力して問題を解決した事が一回でもあっただろうか。何時何時でも、女が助けてくれる。ちょっとうろ覚えだが、例えば、このような感じ。
・会長が気に入った絵師の絵をカレンダーの図柄に使わせて貰うよう交渉。この絵師は企業の広告なんかには絵を描かないという堅物。島は問題を起こして京都に飛ばされていたので、名誉挽回のチャンス。島は偶然立ち寄った小料理屋の女将と出来てしまうが、なんとその女将はその絵師と昔関係があった。愛する島の為に、涙を飲んでその絵師を一夜を共にする。で解決。
・一度会社をクビになる。部下とねんごろな関係になるが、その部下がなんと会長の隠し子。彼女の母親が隠れた大株主でクーデターに成功して復職。
などなど。しかも大して口説きもしないのに、向こうが勝手に惚れて、据え膳食わぬは男の恥を島はやっているだけ。また、厄介な事になりそうになったら、女の方から身を引く。
この物語を消費したのは、島と同世代のオトウサンで、そういう人たちは島に感情移入する事で、いくばくか欲望を満たしていたわけだ。そう考えると非常になまめかしい。そりゃ、会長の隠し子とねんごろになりつつ、社長の愛人とねんごろになっていたら、出世もできますわな。しかも、すごく大人だからお互いに干渉しないときたもんだ。しかも、自分で淫乱だとかいってるんだけど、どういたしましょうか。
マンガ夜話で夢枕さんが指摘していた記憶がかすかにあるのだが、この物語は自分ががむしゃらになって出世していくのではなく、周りに押されて道が開かれるという日本的な美徳につらぬかれている。といえば、格好いいが、実際の所、流されるままにきていたら、気が付いたら取締役。これが現代のビルドゥングス・ロマンかと思うと、少し切ない。勝ち組/負け組ってのもどうかとは思うけど。
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