戯言と作品レビューや分析のブログとその時の思いつき。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


■「スポンサー広告」カテゴリの他の記事を読む。

その数学が戦略を決める
その数学が戦略を決める
文藝春秋 2007-11-29.

梅田望夫の『ウェブ進化論』を読んでいるような感覚。新しい技術とその技術が切り開く新しい世界へ期待と信頼に満ちている。シンプルな主張とそれを納得させる豊富な事例。今まで当たり前だと思っていた事が裏切られる痛快さ。

この本では「絶対計算」という特殊な用語が使われている。膨大なデータセットを元にシンプルな統計処理をほどこせば、専門家の知識を上回る事ができると主張しているのである。著者自身もこの「絶対計算」の研究者である。

例えば、ある年に取れたワインの美味しさをコンピュータは専門家よりも正確に予測する事が出来る。例えば、良い野球選手を一年中アメリカ全土を駆け回っているスカウトよりも上手く見つけ出す事ができる(『マネー・ボール 』)。

アマゾンのおすすめ本よろしくこういった技術を既に企業は取り込んでいるわけだが、とあるカジノの例が面白い。
居住地区、人種、年代などの要素からその客が耐えられる負けの額を算出する。そうしてその限界までやられた客にはボーイがやってきてアフターフォローをするのである。
日本でもパチンコ屋に行けば、パチンコ台の横にはカードを指す場所があってユーザーの動きをトラッキングしている。そういう膨大なデータをどのように使っているのか想像すると楽しい。

「絶対計算」で使われている統計テクニックは「回帰分析」や「無作為抽出」といういわば枯れた技術である。ではどこに革新が起こったのかといえば、まずは、今まで取れなかったデータを手に入れるようになったことが挙げられる。新しいセンサーが開発されたり、統計の生データをネットを通して簡単に入手できるようになった。データベースのマッシュアップ。そして、そういった膨大なデータを分析できる計算力が生まれた。
複数の統計データを組み合わせたテラバイト、ペタバイトのデータプールの中から役に立つルールを掘り出すわけである。

驚くべきなのは、医者よりも「根拠に基づく医療(EBM)」というコンピュータシステムの方が患者の症状を正しく判定できるということだ。医者などの高度に専門的な領域でも正しいデータセットを使えば専門家は絶対計算に勝つ事は出来ない。意外に思えるのだが、次のような補助線を引くと納得ができる。

冠動脈関連の心臓疾患に関する統計調査論文は、毎年3600件以上ある。完全にフォローアップするには毎日10本以上の論文を読まなければならない。そして、これは一つの疾患に限っての話である。いうまでもなく実際の臨床で出会う症例はもっと多い。

一方、診療支援ソフト『イザベル』では、雑誌論文から単語パターンを抽出して病気と結びつけデータベースの中に入力されている。患者の症状をいくつか入力すると、そのデータベースを基にして1万以上の病気から30程度の病気に絞り込んでくれる。

こういったシステムを使えば、失われていたかもしれない命を救えるかもしれないのである。と、同時に専門家からの反発も予想される。訳者の山形浩生が訳者あとがきのコーナーで、「根拠に基づく医療」システムを売りに来た欧米の会社が日本の医療界に全く受け入れられず門前払いをくらったという事例を紹介している。
つい先日、認知症の特集をNHKでやっていたが、かかりつけ医では認知症に対して最新の研究をフォローしきれないので有効な処置ができない云々というような問題が扱われていた。地方の病院と中央の病院との連携という答えもあるだろうし、こういったシステムの導入も一つの答えだろう。番組に出演していた舛添厚労大臣もこういったシステムへの言及をしていたように思う。

とはいえ、こういう「絶対」計算に裏寒さを感じるのも事実である。

根拠に基づく医療をめぐる戦いと同じく、基本的には絶対計算の結果に依存すべきかとうかという戦いだ。自分が気に入らなくても統計的に有効性が確認されたやりかたにはしたがうべきだろうか?


例えば、この本で紹介されているダイレクトインストラクションという教育手法はどうだろうか。非常にシンプルで教師は台本に従って授業をする。それだけである。それだけで、統計的には他の教育方法を押しのける成果を挙げている。誰でもできるわけだから教師にかかるコストも下げられて、良い事づくめに思える。しかしどこか裏寒い。教師は台本に従っていればそれでいいという主張には、百マス計算をやっていればいいというような主張とは異なる裏寒さがある。

統計はいくらでもウソをつく(例えば『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)』)。あえて謝った分析もあればデータのマッシュアップの最中に生じた事故もあるだろう。絶対ではない。しかし、こういった流れ自体には逆らえない。サヴァイブするための道具として統計を使う必要がある。著者は、「平均値」「標準偏差」「ベイズ検定」という実際に使える基礎的な統計を紹介してこの本を閉じる。

「52%の支持率対48%の支持率。誤差範囲はプラマイ2%。」これがデットヒートだと思えるようであれば、マズいと著者はいっている。

絶対計算が世界を覆おうとしている。そういう世相を語るにしろ、道具として使いこなそうとするにしろ、企業にだまされないようにするにもまずは現状をしる必要がある。その為にはこの本が与えてくれるビビッドなイメージが役に立つ。

*
1.27追記。

[404 Blog Not Found]でオライリーのHackシリーズの統計本が紹介されていた。Hackシリーズはソースコード(原理)が載っている「できる」シリーズみたいなもので、情報密度が高い。
事例集としてのこの絶対計算本は面白いので、「実践的」なHacks本と併せて読んでみてはどうか(プログラミング言語にアレルギーがある人にはキツいかもしれないけど。)

Statistics Hacks ―統計の基本と世界を測るテクニック
Statistics Hacks ―統計の基本と世界を測るテクニック

 RSSリーダーで購読する


関連記事

■「書評」カテゴリの他の記事を読む。


管理者にだけ表示を許可する
http://nipponia.blog44.fc2.com/tb.php/120-a0d9b422
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
その数学が戦略を決める 作者: イアン・エアーズ, 山形浩生 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2007/11/29 メディア: 単行本 まずタイトルに違和感。数学というよりは統計学orデータマイニングが正確かと。インパクトを狙うなら「専門家はもういらない!」といったあたりか
[ ゆっくり急げ ]
フェラガモ アウトレット  【2013/07/03 Wed】
書評;データの海を泳ぐヒト『その数学が戦略を決める』::クリティカルヒット
[ フェラガモ アウトレット ]
グッチ 財布  【2013/10/25 Fri】
書評;データの海を泳ぐヒト『その数学が戦略を決める』::クリティカルヒット
[ グッチ 財布 ]
アグ ムートンブーツ  【2013/10/31 Thu】
私にとっては| 詳細情報最も重要不可欠な重要な |私は、これはの中の1 だと思います。と私はあなたの記事を読んで嬉しい。しかしたい |一般的なものは、 ウェブサイトスタイルです完璧 、記事が本当に優れた{ |素敵|偉大いくつかのいくつかにマーキング}: D.良い仕事、歓声
[ アグ ムートンブーツ ]
ugg メンズ  【2013/11/11 Mon】
そこの点は、いくつかのまともな を作りました。 私のためにインターネット上で見て 主題 、ほとんど発見人物 承認うとあなたのサイト 。
[ ugg メンズ ]
-  【2013/11/20 Wed】
管理人の承認後に表示されます
[ ]
// HOME // 
Powered By FC2ブログ. copyright © 2005 クリティカルヒット all rights reserved.
プロフィール

クリティカルヒット

Author:クリティカルヒット
気がつけばアニメとかニコ動のことばかり書いてます。更新頻度はかなり低いので、よろしければTwitterなどにもアクセス下さい。

メール:criticalhit.blog[at]gmail.com
タンブラ
Twitter

Twitter

Twitter < > Reload

RSSリーダーで購読
最近の記事
タグ
カテゴリ
人気エントリ

最近のコメント
最近のトラックバック
カレンダー

08 ≪│2017/09│≫ 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

全ての記事を表示する
現在の閲覧者数:
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。