戯言と作品レビューや分析のブログとその時の思いつき。

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 シチュエーションもキャラクターも物語も、どこかで見たようなものばかりである。
 しかし、武梨えりの凄さはそんな所にあるのではない。

 書き込みの密度が半端無いのだ。

 といっても、絵が黒っぽいという事ではない。 キャラクターやキャラクターの関係性や心情、シチュエーションといったマンガ全体がもっている情報量の密度が濃いのだ。

 前著『TAKE MOON2』のあとがきマンガにこうある。「タイプムーンに萌え転がるパワーの余剰で生まれた様な本でございます //ぜひ一緒に転がって頂けたら幸いです」

Takenashi 01
TAKE MOON2 より

 グレンラガンの放映中武梨えりは、連載を抱えて忙しいはずなのに、パロディイラスト満載の特設サイトを開いていた。そのあまりの面白さで、武梨えりを知った。その縁か、武梨さんは週代わりで切り替わるガイナックスのトップ絵を描いていた。特設サイトの方は残念ながら削除されてしまっているが、ガイナックスのトップ絵の方は今でも見る事ができる

 画面一杯にニアが溢れかえっている。作者の萌え転がり、武梨えりは「怨念(?)」とイラストのコメントに書いているが、そういった感情がそのまま作品に叩き付けられている。

 このパワーの余剰が「密度」に置き換わっているのだ。『かんなぎ』でも同じだ。一度、武梨えりという蒸留装置を通して得られた濃度の高いエキスで、『かんなぎ』は作られている。このエントリを描こうと思って1ページ1ページを丁寧に追ってみたのだが、読めば読む程に面白い。
 
 同時代や同じ作品を通過してきた、同じ記憶のアーカイブを共通して持っているという事も、武梨えりの面白さに繋がる。

TAKE MOON 2 (2) (IDコミックス DNAメディアコミックス)
TAKE MOON 2 (2) (IDコミックス DNAメディアコミックス)

 例えば、『Fate』のエッセンスを見てみる。いつもお腹を空かせているナギ(『かんなぎ』のメインヒロイン。土地の守り神を主人公・仁が顕現させてしまう)は、どこかいつでもはらぺこなセイバーを思い起こさせる。ナギと同居している事を知らない幼なじみのつぐみが家に訪ねて来た時、嘘をついて追い返すくだりは、遠坂凛が桜を追い返したシーンを思い出す。力を失ってしまった少女を助けてケガレを退治するという『かんなぎ』初期のモチーフもセイバーと士郎の関係を思い起こさせる。

 3巻の最後の方にある、「事故」で風呂上がりのナギに偶然に、覆いかぶさってしまうというシーンがある。これなんかはモロにエヴァンゲリオンにおける、忘れ物を届けに来たシンジと綾波のくだりだろう。新劇場版「序」でも映像化されたあのシーンだ。ここでこう来るか!と思わずにやりとさせられた。

 勿論、異世界の少女達が主人公の家に住み着いたりドタバタを繰り広げるという骨子は『うる星やつら』や『ああっ女神さまっ』に代表される作品群を思い起こさせる。和風テイストな神様のキャラクター化は『天地無用!』。とりわけ1巻冒頭にある子供時代の仁を顕現する前のナギが見つめている姿や、人間の何倍も生きている故の見た目の割には老けている性格なんかは、ナギの中に魎呼の面影を見てしまう。

 キャラクターや設定だけではなく、丁寧な日常描写とそこから一歩だけはみ出したカオスなギャグという組み合わせはどことなく『よつばと!』を思い起こさせる。学校で主人公が所属する美術部で展開されるオタ的サークル描写なんかは、ちょっとだけ『げんしけん』のような匂いがする。

 こんなにもありきたりのもので作られているのに、『かんなぎ』がこんなにも新鮮で面白いのはどうしてなんだろうか。

 それは、武梨えりという蒸留装置への信頼だ。
 雑多な素材がこれでもかと放り込まれている。
 しかし、消化不良の素材は一つもないと、あえて断言しよう。

 元ネタが消化不良のままで転がっている様な作品にはやはりあまり良い印象を持てない。武梨えりは素材を自分自身の作品に血肉として取り込んでいる。水と油のような異なる素材でも一つの形にしてしまう職人芸。萌え転がるという身体感覚を一度経由しているからかもしれない。

 顕現する際に力を失ってしまったナギが、テレビで偶然見た魔法少女ものアニメに影響を受けて玩具の魔法スティッキをおはらい用の神具に改造してケガレに望む。「妾の中に力がなければ外部オプションをつければよい//つまりー祓具!」そして、神社の境内で仁とナギは玩具を振り回しつつ、ケガレを退治する。そこに、仁の様子を心配した幼なじみのつぐみがやってくる。

Takenashi 02
かんなぎ 1巻より

 武梨えり『かんなぎ』の魅力をもう一つ挙げると、作者の視線の安心感だ。
 武梨えりは安易な欲望肯定系には決して陥らない。構成は似ているが、いわゆるハーレム物とは一線を画しているように思う。『らき☆すた』や『こどものじかん』のような対象に対するストレートな描写は、読んでいて面白いんだけど手放しで喜べない様な微妙な読後感がある。『ネギま!』くらいまで突き抜けると、清々しいんだけれども。

 武梨えりのマンガでは、対象との距離は一貫していて、一つのキャラクターや一つの関係性を盲目的に信じる事をしない。だからこそ、一つ一つのキャラクターや関係性に強度を持たせる為に、描写の密度が生まれて行く。その結果として、 一つの属性に割り切れないキャラクターが紙の上に生まれている。

 勿論、「貧乳」や「巨乳」や「太もも」といった全然違う魅力を描ききる画力の高さが底支えをしている事はいうまでもない。

かんなぎ 1 (1) (REX COMICS)
かんなぎ 1 (1) (REX COMICS)

かんなぎ 2 (2) (REX COMICS)
かんなぎ 2 (2) (REX COMICS)

かんなぎ 3 (3) (REX COMICS) (REX COMICS)
かんなぎ 3 (3) (REX COMICS)


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カテゴリ:評論
タグ: マンガ かんなぎ 武梨えり
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クロムハーツ  【2013/10/23 Wed】
萌え転がりの密度;武梨えり『かんなぎ』::クリティカルヒット
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