
"ALL YOU NEED IS KILL (集英社スーパーダッシュ文庫)" (桜坂 洋)
『ゲーム的リアリズム』経由で読む。
地球外生命体が惑星環境を改造する為に、ギタイという敵を作り出した。人は、筋力を強化する程度のスーツで戦っている。
初年兵として戦場に配備されたキリヤケイジを主人公に進む。
『ひぐらし』と同じくループする世界を舞台にしている。
「ループを終わらせる為の戦い」「永遠の数日」「持ち越される記憶と持ち越されない記憶」「ループの中での孤独」「ループを知る者との出会い」といったような、同じ様な仕掛けが使われているのが面白い。
『ALL YOU NEED IS KILL』 と『ひぐらし』の違いといえば、ループしている生活の質の違いだろうか。『ひぐらし』では、雛見沢で繰り返される楽しい日常生活があって、それが徐々に汚されていく。『ひぐらし』のループの終了はそういった楽しさの徹底的な壊滅によって訪れる。例えば、仲間達と仲間達との殺し合いというような形で一つのループは終わる。従って、『ひぐらし』のループの脱出は、世界がそもそも持っていただろう楽しい日常を取り戻すという事に主眼が置かれる。
一方、『ALL YOU NEED IS KILL』では日常はただ「クソったれ」なものでしかない。人類が絶滅の危機に瀕しているという絶望的な戦い。そして、ループが終わった後の世界も同じように「クソったれ」なものでしかない。ループが抜けても、そこには終わりの追わない「敵」との戦いが待っているだけなのだ。
何十回とループを繰り返し同じ戦場を繰り返す。その中で「リタ」という少女に出会う。その二人の間に交わされた情感がこのお話の中心になる。「たった一人で世界を背負う」ということの孤独の共感。リタへの感情の転移か使命感かはわからないが一人の男が「世界を守る」という結論を手にするという事で物語は終わる。
惜しむべきは、戦場の凄惨さや世界観の乾いた感じがあまり表現されていないという事だろうか。設定・世界観・キャラクター・文体がミスマッチなような不思議な印象。