いとうのいぢ絵が見たくてソフマップで中古を衝動買い。
主人公である亜梨須(ありす)は「夢」の世界にある日突然迷い込んでしまう。
そこはどことなく不思議の国のアリスの世界っぽく、しかも女の子しかいない。
世の小さな女王様、内気な帽子屋さん、人間に変身できるねこさん、立ち絵が微妙に違う13人の兵隊さんなどなど。
そこで訪れるゆるいハーレム展開。
他にも、主人公と同じく外の世界から迷い込んで来た女の子がいる。深識という名前で、このお話のメインヒロインとなる。
夢の世界の住人たるキャラクター達はそれなりに個性が強い。
いとうのいぢ名義の作品、例えば『ななついろ★ドロップス』や『Peace@Pieces』がストーリーをメインにして、濡れ場が挟まるというような構成なのに対して、伊藤雑音名義の『ALICE♥ぱれ〜ど』はエロスに一直線で、何処をクリックしてもたいていは濡れ場になる。いとうのいぢさんといえば、ハルヒやシャナのキャラクターデザインで有名なわけで……げふんげふん。
つまり、ヒロインの構成とは提供できる濡れ場のパターンになるわけだ。スレンダーなタイプから巨乳タイプまで、内気なタイプから積極的なタイプに至るまで、和服の女の子から猫耳なメイドさんに至るまでが全方位的に揃っている。
いってみればこのゲームの中で、ヒロイン達はプレイヤーたる男子の欲望を反映する属性を付与されている。
一方、メインヒロインたる深識は無色透明で中立的な性格づけである。とりたてて個性的でもない。衣装も普通だし、そもそも濡れ場自体が極端に少ない「普通」の女の子なのである。
ここからが面白い所なのだが、これからプレイする予定の人の為に一旦文書を切る。
以下、ネタばれ全開で。
しかし、深識ルートの後半に至って、実は主人公が迷いこんでしまった世界は深識の夢の世界であると判明する。
ここで、夢の世界の住人=プレイヤーの欲望の反映という図式に加えて、夢の世界の住人=深識の希望・願望という図式が新たに立てられる事になる。ベタな濡れ場を中心としたハーレムゲームの世界観に別の視点を持ち込む事で、メタレベルからの転回を行っているのだ、というほど大げさな話でもないのだが。
メインヒロインのルートは、ありすはこの世界が彼女の「夢」である事を受け入れ、彼女と共にこの「夢」の世界を脱出し、現実世界で彼女と共に歩もうとする。
サブヒロインのストーリーは、逆に「現実」を捨てて、「夢」の中に留まろうとする。サブヒロインのルートはベタなものが多いのだが、メインヒロインのルートをふまえて見ると様相が変わる。例えば、小さなお店を出して主人公と細々とやっていくというようなエンディング、主人公の間に出来た(?)小ウサギに囲まれるウサギの女の子など、深識以外のヒロインが総じて結婚をしたり子供(?)に囲まれたりといった女の子の素朴な「夢」に帰結するのである。
この「夢」とは深識の夢といっていいだろう。無色透明な内気な女の子の内面が、欲望丸出しの直接的なサブヒロインという形でキャラクター化されているのである。(もっとも、全てが深識から生じたわけではないという説明はあるにはあるが、クレタ人のパラドックス的な捉え方もできる)
彼女の「夢」と伴うという選択肢を選んだ時、現実世界では何が起こっているのだろうか。それは直接は描かれない。しかし、ありすのみが現実世界に戻り、深識は夢の世界にいるという場面では、深識はいくら声をかけても目を覚まさず、自らの夢の世界にとらわれた状態になっている。では、二人が幸せな「夢」の世界に耽溺すれば?
「夢」の中の深識は徐々に記憶を失っている。自らの主体性を捨てて「夢」の一部分に成り下がった深識とは?現実世界で眠り続ける二人……。こういった悪夢的な世界が広がっているのかもしれない。
全てのルートをクリアするということの意味は、ゲームの内部からは描かれる事は無い。しかし、以上の事をふまえれば、深識という女の子の中に見える夢や願望を含めて受け入れる、言い換えれば彼女の全てを受け止めたい/受け止めてほしいというメタレベルでの物語がそこでは展開されている。
『ななついろ★ドロップス』の少女マンガっぽさというのはよく指摘される所だが、『ALICE♥ぱれ〜ど』の中にもこういったモチーフが見られる。そして、ベタに展開されてしまえば照れてしまうようなモチーフも、こうやってメタに展開されてしまえば素朴に受け入れてしまう。
これは、作品を一歩引いた視点から見る、という習慣から来る逆説なのかもしれない。メタな視点にはメタな物語がフィットする。
こういった暗黙的なメタレベル(があるとここでは読んだわけだが)をキャラクターとして設定して大成功した例が、「羽入」や「ハルヒ」といえるのかもしれない。まさに「羽入」に感情移入する事で、こういったメタレベルな読み方を本筋に持ち込んだのが『ひぐらし』という物語だったのである。
『ALICE♥ぱれ〜ど』は手放しで面白いといえる作品ではないとは思うけども、最後にハッとさせられたので、記述。
■関連リンク
・ALICE♥ぱれ〜ど公式ウェブページ・amazon
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