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 ダ・ヴィンチ2011年二月号(→amazon)から連載されている東浩紀の「フラクタル/リローデット」を読んでいたら、アニメを見ているだけでは気がつけない色々な設定が明かされていたのでちょっと紹介してみたい。(『フラクタル』は、山本寛監督・岡田麿里脚本・東浩紀原案で一月から放送されているアニメーション。ノイタミナ枠。公式サイトはこちら

■到達できない「真実」への二次創作
 この小説版フラクタルには二人の語り手がいる。
 一人は、アニメ版でも主人公を務めるクレイン。ただ彼は四十代半ばになって、自分のかつての冒険(=アニメ版で描かれる内容)を音声記録として残す。そんな彼が残した音声資料を200年後に聞いているのが、もう一人の語り手であるクレイン8世(モリー・ナ・ビナ・クレイン8)だ。彼女は、クレインの子孫でクレイン事件に対する調査を行っている。

クレイン8・モリーはこう語る。
 生家の場所については諸説ある。西海岸の崖、縁ぎりぎりにぽつんと建てられていたという説もあれば、キルロナンの町中にあったという説もある。
 あたしは町中にあったという説を支持している。テクスやヴィドでは崖っぷちの一軒家が好んで描かれるけど、それはあまりにロマンティックというか、クレインの人生を美化しすぎだと考える。


また、四十代半ばのクレインはこう語る。
 グラニッツ一家がフリュネを追ってきたり、ぼくと彼女が圏外を求めて郊外の廃墟に逃げ込んだりという話は、すべては後世の創作によるもので、現実にはそんなドラマティックな展開は一切なかった。


 ここからは、アニメ『フラクタル』はフラクタル世界における現実を素材としたフィクションである事がわかる。クレイン達の冒険は世界を一変させるもので、後世に物語として語り継がれている。我々の世界での大河ドラマという所だろう。

 四十代半ばのクレインの肉声を信じるなら、アニメ版の一話において二人の出会いをいろどっていた廃墟のシーンは実は存在していなかった!同じ様に、少女がメーヴェみたいな乗り物に乗っていたのかもわからない。それはあくまでも演出家の趣味でしかない。本当の『フラクタル』は全然ジブリっぽくないのかもしれない。

 アニメ『フラクタル』は歴史的事実の影にしか過ぎず、本当の事実は描かれない。描きようがない(*)。そんな到達できないミステリーを探ろうとするのが小説版の主人公クレイン8世、というわけだ。

■フラクタル世界に溢れるガジェットについて
 次に、フラクタル世界に溢れるモネとかドネとかドッペルとかの固有名詞について、小説から設定を拾っておく。

□貨幣
 劇中での貨幣にはモネとドネの二種類がある。モネ=交換貨幣、ドネ=贈与貨幣のこと。モネは現在流通している貨幣と同じもの。ドネというのは、ライフログをサーバに送信する事で得られる基礎的な所得の事。いわゆるベーシックインカムの議論をSF的に飛躍させたものだろう。劇中では、「お祈りの時間」として特定の方角を向いて太陽のようなものを見つめるシーンが描かれるが、これがライフログの送信にあたる。

□ドッペル
 アニメ版1話では、広場にいた人たちがセキュリティによって消されてしまうシーンや、クレインの両親の姿で印象深いドッペル。
 私は、アバターが現実世界に投影されているものかと思っていた。つまり、両親はどこか別の地域にいて実家の家にアクセスしているようなイメージでいたのだが、それは間違っていたようだ。彼らは小説版で代行人工知能と表現されている。ライフログを送信して、その蓄積を模倣することによって、あたかも本人でもあるように振る舞える人工知能という設定だ。
 ドッペルと情報を共有する事で家族との疑似同期がとれるわけだけれど、クレインは両親に対して同期してくれるだろうとは期待せず、またそういった現実を肯定的に捉えている。

□古物
 我々世界の最先端のガジェット、近未来のガジェットがアンティークになっている。アニメ版1話で、フリュネがiPod的なものをいじって映像を投影させているけれども、それは500年前のガラクタ。ドッペルが人間と変わらず存在できる程度に拡張現実が実装されていたら必要の無いガジェットである。



 ここまで、小説版フラクタル/リローデットを読んで得られた興味深い設定をいくつか紹介してみました。

 アニメ版の第1話では、三人のヒロインとの出会いが描かれ、また家族や、孤独についてもいくつかの伏線が張られおり、これらについてはまた別の機会にしたいと思います。

(*)
 このちょっとしたメタ構造の導入は、アニメ版がフラクタル世界の歴史に対する二次創作的なものとして設計されている事を意味している(大河ドラマとしてのアニメ『フラクタル』)。
 もちろんそれは一次的なもの=クレイン達が引き起こした事件を到達できないものとして設定した事による捏造でしかないけれど。この設定は、複数の人によって作られるアニメーションという表現の位置づけ、メタファーとしてもしっくりとくる。複数の人間が捉える異なった世界像を調停する為には、到達できない真実を設定するのが具合が良さそうだ。
 『フラクタル』に関する創作物は全てが二次創作なのである。到達できない「真実」からすれば、多少なりとも狂っているのは当然となる。設定上、この「真実」に到達できるものは一人もいない事になる。山本寛、岡田麿里、東浩紀といった主要スタッフにも到達はできない。
 ここら辺は、ラカンの対象aだとか、東浩紀『存在論的、郵便的』を紐解くと何かいえるのかもしれないけどそれはまた別の機会に。

※11.1.22 23:00 本文の修正をしました。あわせて、タイトルを修正しました。(旧タイトル『フラクタル』の世界観/到達できない真実への二次創作・ガジェット)

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