戯言と作品レビューや分析のブログとその時の思いつき。

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 げんしけんの10巻を読んでいると、冷や汗ばかりでてきた。
 一コマ一コマを読む事に耐えきれず、ぱらぱらとページをめくって話を確認するような読み方になってしまう。

 「現代視覚文化研究会」という大学のオタクサークルが舞台の青春活劇が『げんしけん』で、一端は2006年に連載が終了している。2010年に入って、断続的に新作が発表されるようになる。この新しい『げんしけん』では、旧メンバーのほとんどは卒業していて、旧『げんしけん』時代に後輩として入会してきた荻上という女の子が会長となってサークルを仕切っている。

 作者の木尾士目は『四年生』『五年生』といった大学生の生活や恋愛を泥臭く描く作品も描いていて、『げんしけん』はこの路線をオタクサークルという場所に移して正当継承したものともいえる。同時に『らき☆すた』のようにモラトリアムとしての学校生活を楽しむ日常を描く1ジャンルに属しているとも読める。この2つの要素が絶妙に混じりあって『げんしけん』の世界を作り出している。

 何度もアニメ化された人気作品で、私は当時大学生だったという事もあって、自分をだぶらせるようにして読んでいた。オタクサークル的なものには入らなかった私は、『げんしけん』を読んで自分にありえたかもしれないIFを夢想していたのだった。

 連載終了から数えても、5年という月日が過ぎた。本屋に行って、『げんしけん』の10巻が平積みにされているのをみて、当然のように買って帰って、家に積んで置いた。少しばかり時間が出来たのでぱらぱらとめくると冷や汗が止まらない。

 おそらくは荻上の成長を受け止める事が出来なかったのだろう。『げんしけん』の中の彼女たちは成長して前に進んでいるというのに、自分は五年前とほとんど同じ場所に立っていたのだから。

 荻上は、旧『げんしけん』で「オタクが嫌いな荻上です」と自己紹介をする。オタクであるという事を受け入れられないと同時に「現代視覚文化研究会」に参加しているという矛盾だったり、他のメンバーと私は違うのだという示威行為をしてしまう未熟さだったり、荻上らしいセリフだ。

 そうやってお客さんでいられた時代は過ぎ、今は「現代視覚文化研究会」という役割を引き受けている。不器用で見ていられない程に必死になって、どうやって新入生を勧誘しようか考え、メンバーが集まっても彼らの気持ちを引き留めようと気苦労は絶えない。昔の荻上の自己紹介は下級生にパロディにされて、荻上は顔を赤らめる。

 げんしけん10
(『げんしけん<10>』p.25)


 そんな荻上の姿を見ていると、かつては共に歩いていたはずの「現代視覚文化研究会」の面々に取り残されてしまったようだった。
 荻上の変化は彼女をフックに『げんしけん』の世界に入り込んでいた私には居心地が悪かったのだろう。

 そんな読者の事は想定済みとばかりに、大学時代をひきずる斑目を物語に組み込もうとするあたりは、さすがなのだけど。

 げんしけん10
(『げんしけん<10>』p.101)

 *

 おそらく、9巻と10巻の間に5年という時間が無ければこのように感じる事は無かっただろう。この5年の間に、いつのまにやら作品やキャラクター自分の血となり肉となってしまっていた。だから、キャラクターの成長がまるで自分から大切なものが引きはがされてしまうかのように感じてしまったのだろう。

 だから、キャラクターの成長や葛藤が今自分が立っている場所にそのまま照射されてしまったのだろう。こうしてひとつの作品と共に歩んでいけるのは、幸せな事だ。少なくとも4~5年の歳月が無ければそんな作品とは出会えないのだから。

 物語への感情移入は、相性の良し悪しや技巧などで瞬間的電撃的に定まってしまうものと決めてかかっていたが、そうではなくて読者側の生活の時間の中で徐々に血肉化していくルートもあったようだ。良い小説とは、歳を取って読み返す度に新しい発見があるものだとどこかで読んだけれど、そういった感覚と似ているのかもしれない。

 古い読者にこんなサプライズを用意してくれた木尾士目に最大の賛辞を。





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【2013/06/28 Fri】 // # [ 編集 ]

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