戯言と作品レビューや分析のブログとその時の思いつき。

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※タイトル変更しました:旧>シミュレーションとしてのアニメーション:アニマス1話のモキュメンタリーをみて

■ドキュメンタリー風の演出
アイマスの第1話は、ドキュメンタリー風の演出がされています。
#直接のパロディ元は『プロフェッショナル』でしょうか。
#黒い背景に中央1行で白テキスト・さらにそこに重なるピアノのポーンという音、小鳥の紹介の字幕など

 最後にはこのドキュメンタリーのカメラマンとして新人プロデューサが参加していたという事が明かされて、話のオチになっています。今まで見てきた画面は、新人プロデューサーの視線でしたと、ひっくり返されます。同じように画面を見ている視聴者=新人プロデューサになるというそういう仕掛けです。

 この設定を知ってから見直すと味わい深いものがあります。 カメラマンに怯える雪歩だったり新しく入ってくるプロデューサーの話題をしながら目配せをする律子と小鳥だったりと、カメラマンに対してリアクションをするアイドルの皆さんが丁寧に描かれています、
 前半部分では(あなたにとってアイドルとは何ですか?という質問まで)早朝からはじまって日が暮れて夜になって終わるまでの時間の経過が描かれます。 丸1日の密着取材で、事務所の中やCDの販促、オーディションやライブ会場を巡って765プロ所属のアイドル達と出会ったというわけです。

 ドキュメンタリー演出として白眉なのは、後半部分の「あなたにとってアイドルとは何ですか?」という質問に答えるアイドル達が次から次に映し出されるパートでしょう。次から次にアイドル達が登場するのですが、前半部分と同じ背景・同じ構図で描かれます。美希はジャージを来て床にぺたりと座り込んでいる。貴音は屋上で髪をなびかせている。

 これらは撮影したフィルムを編集して、一本の映像にまとめた、という演出です。当然ながら、アニメーションはテープで取材者を様々な場所で撮影をしているわけではありません。が、そこに制約を加える事でドキュメンタリーっぽさを表現しているわけです。こうやって配置を変えるだけで、 そこには存在していなかった取材テープの存在すら浮かび上がってくる。見事です。

■ドキュメンタリーとフィクションの奇妙な混在
 Wikipediaによれば、このようなドキュメンタリー風に演出されたフィクション作品をモキュメンタリー (Mock-Documentary) というようです。作品例として、ラジオドラマ『宇宙戦争』(1938)、映画作品『スパイナル・タップ』(1984)、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)などの作品が挙げられています。
#『宇宙戦争』…火星人侵略を本物のラジオ・ニュースであるかのように伝えた
#『スパイナル・タップ』…架空のヘヴィメタルバンドを取材
#『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』…魔女伝説を取材中に失踪した学生達のフィルムを再構成

 少し抽象度を上げれば、広く認知された形式があって(ニュースやドキュメンタリー)その形式をそっくりそのまま模倣する事で、その形式が持っていた属性をフィクション作品内に密輸入するという事でしょうか。
 警備員の服装をはぎ取って企業に侵入する泥棒のようなイメージです。

 さて、アイマスの第1話は、ドキュメンタリー形式の演出で徹底されているわけではなく、通常のフィクション・通常のアニメの演出が奇妙に混在しています。

 例えば、冒頭のシーンを見てみると、桜並木を駅まで自転車に乗って移動する春香が描かれます。自転車を駐輪場に止め、Suicaを押し当てて、改札の中に入り、カメラマンに向かって「おはようございます!」と第一声を放ちます。
 改札の内側でプロデューサはずっと春香が登場するのを待っていたのだとすれば、誰が桜並木を自転車で駆け抜ける春香を撮影したのでしょうか?(春香さんと新人プロデューサーカメラだけで勝手に再編集したものをニコニコにアップしましたので、よろしければ参考までに)

 次に、喫茶店のシーンのカット割りを見てみましょう。ドキュメンタリー風の演出ではなく、アニメ的な演出が非常に細かく丁寧になされています。

001
01-00-1
全体を写すカット。右から左にパン。
真「とりあえず体力には自信があります!だから…」

002
01-00-2
真「ボク、特にダンスを磨きたいなって思ってます!」

003
01-00-3
真「テレビの歌番組や大きなステージでかっこよく踊りたいんです!」

004
01-00-3
記者「菊地クンは女の子に人気あるよねぇ。ボーイッシュだからかな。」

005
01-00-3
(効果音)真「……」

006
01-00-3
椅子に座る真。
真「また、この質問…。こうなったのも全部父さんのせいだ。」

007
01-00-3
心配そうにみつめる律子。
真「だって、ボクが女の子っぽくするのを妨害してくるんですよ!」
律子「ま、真。」

008
01-00-3
ぷるぷる震えている真。勢いよく立ち上がって、
真「いずれあの父さんの壁をぶち破らないと!」

009
01-00-3
真「見てろ!父さん!!」
記者「あはは。では萩原雪歩さん」

010
01-00-3
以下、雪歩さんのインタビュー。


 たった30秒ほどのシーンなのですが、費やされたカット数は10にも及びます。
 1つのカット毎に何かしらの目立つアクションが入っていて、そのアクションに沿ったセリフを勢いよくまくし立てる。真が立ち上がる時はそのアクションが描かれ、テンションが上がったり下がったりする真の表情が逐一画面上に描かれます。そのアクションが最も魅力的にうつるアングルをピンポイントに切り抜いてくる。

 これはアニメの演出としては優れていると同時に、ドキュメンタリーには見えません。

主なカットを分類すると、

・顔のアップのショット(記者・律子・真・雪歩)

・テーブルの片側を押さえたショット(律子と記者・雪歩と真)

・4人を手前うしろから撮ったショット(律子の斜め後ろから俯瞰で・雪歩の斜め後ろからあおりで)

となります。

 この一連のシーンを、会話をしている彼女たちを同時に複数のカメラで撮影したものだとすればカメラの配置は次のようになるでしょう。




 真サイドの顔のアップを担当するカメラ(A)・律子サイドの顔のアップを担当するカメラ(B)・両サイドを写すカメラ(C)・引きの絵を撮るカメラ×2(D,E)と全部で五台のカメラが回っている事になります。

 実際のドキュメンタリーで考えればこのように密着取材をしながら、5台もカメラを回すとい事は、まず無いように思われます。とりわけて、現状の765プロにそんな体力があるとは思えません。

 ここではプロデューサー=カメラマンといった演出はほとんど放棄されている事がわかります。その意図は映像からは読み取れませんが、主役級のキャラが大変多い作品なので彼女たちにそれぞれの見せ場を作るという事を、新人プロデューサー目線でのドキュメンタリーとして完結させる事よりも優先したのではないかと私は思っています。

 しかしながら後述するように、アニメーションでドキュメンタリーを再現するというのはそもそもナンセンスを含みます。我々の世界は絵の具で構成されているわけではないのです。全てを忠実に再現しても絵であることには変わりがない以上、ドキュメンタリーでは無い事は明確です。
 となれば、結局の所視聴者との間に「これはドキュメンタリーなのだ」というお約束が成立しているか否かだけで全てが決定されてしまう。
 勿論、そういった視聴者との共犯関係を満たすためにドキュメンタリー風の演出を積み重ねるのがモキュメンタリーでしょうが、それらの作法がアニメでも有効なのか否か。これは議論が分かれる所でしょう。私は奇妙な違和感を感じて立ち止まってしまいましたが、ドキュメンタリーとして受け入れているようなレビューを観ることもあったからです。

 次に、忠実に実写のカメラを再現した作品と比較をしてみたいと思います。

■1台のカメラという制約・徹底的なシミュレーション
 取り上げるのは、涼宮ハルヒの憂鬱のテレビ版第1話「朝比奈ミクルの冒険」(2006)です。SOS団という「部活」で、文化祭の為に作成した映画が「朝比奈ミクルの冒険」です。

 「朝比奈ミクルの冒険」は学生映画を模した作品で、ドキュメンタリーを模した作品ではありません。が、アニメーションの中に別の形式を密輸入している点では同様です。学生が撮った素人臭い映画という「形式」がありその形式に沿って忠実に作ることによって、独特のリアリティを手にしています。

 「ミクルの冒険」は、すべてのカットが1台のカメラだけで撮影された映像だけで構成されています(見落としが少しはあるかもしれません)。物語内のSOS団が手に出来た機材や撮影環境を忠実にアニメーションで再現しているのです。シミュレーションといってもいいかもしれません。

 例えば、冒頭のミクルのシーンを見てみましょう。

001
Haruhi01-01
キョンによるナレーション。
ミクルは口をぱくぱくさせているが音声は載らない。


002
Haruhi01-02→パンHaruhi01-03
看板からミクルへとパン。
悪い機材のシミュレーションとして、カメラワークはがたついている。また、ズームボタンを使って微調整も行われる。
口パクをしているミクルにキョンのナレーションが被さっているが、ナレーションが終わると、ミクルのセリフ「お急ぎの所すみませーん……」が始まる。

003
Haruhi01-04
001と同ポジション。撮影された時間軸としては、001と繋がっているのだろう。
ミクルは口パクで、キョンのナレーションが重なっている。

004
Haruhi01-05
買い物に来たおばちゃん達のカット。
徹底的に棒読みや、奇妙な影の付け方など素人臭さを全面に押し出されている。

 こういった一連の演出から、1台のカメラで行き当たりばったりに撮影された映像である事が印象づけられます。このシーンは、監督であるハルヒがカメラ位置を変えて何度も何度も(おそらくは)アドリブで演じさせているのです。

 撮影の時には、完成された映像の何倍もの時間がかかっているでしょう。朝比奈ミクルがへとへとになるのはそれ故です。これはアイドルマスターの喫茶店のシーンとは対照的な処理の仕方です。喫茶店のシーンでは、完成映像の時間経過と撮影時の経過時間にはほとんど差はありません。

 監督であるハルヒやカメラマンであるキョンは、原則としてカメラには写りません(だめ出しをしている所が編集ミスで映っているシーンはありますが)。容易に撮影風景が想像できる演出が徹底されている為、フレームの外側にいるキョンや、みくるに無理矢理演技指導をしているハルヒの姿がやたらにリアルに感じられるのです。

 作品は最後には上映会に切り替わり、そこでは今までの抑圧を振り切るかのように、実写ではあり得ないようなカメラワークを次から次に展開して、この緩急にも開放感を感じられる演出となっています。

■シミュレーションとしての映像の「リアル」とは
 アイドルマスターの1話と「朝比奈ミクルの冒険」の共通点としては、別の形式をアニメーションに取り入れているという点にあります(ドキュメンタリー・学生映画)。
 また、その形式そのものを視聴者に自覚させ、その結果としてフレームの外側への想像力を喚起させます(「ミクル」の場合だとハルヒやキョン、「アイマス1話」の場合だと新人プロデューサー)。(7.29 加筆)

 その結果カメラマンの視線=登場人物の視線という構造になり、視聴者とアニメーション内のキャラクター達の関係が奇妙に歪みます。画面の中と視聴者が地平を共有しているかのように錯覚し、彼女たちの同様の空間にいるのではないかと錯覚してしまうのです。

 そもそも、アニメーションにおいて、「疑似」ドキュメンタリーは成立するのでしょうか。少なくとも現在の映像環境ではアニメーションで作られたドキュメンタリーもニュースフィルムも存在しません(ニュース映画が一般的であった時代なら、少しニュアンスが違うかもしれません)。

 アニメーションで描かれたという事は、脚本があり絵を描いた人が存在する事は自明で、全てがシミュレーションとしての映像になります。であれば、アニメーションにおいては疑似ドキュメンタリーがそもそも成立しません(実写でニュースを切り取れば「リアル」であるというのも安易ですが)。 我々を取り囲む風景は絵の具で描かれているわけではないし、出会う人々がデフォルメされた絵でできているわけではないのです。

 全てがシミュレーションでしかないアニメーションがモキュメンタリー的なリアルを描くためにはどうすれば良いのか。その答えをアニメーションが描かない場所に求めたのではないでしょうか。つまりは、その映像を撮ったカメラマンや演出家を偽造し、そこに視聴者の想像力を集中させるのです。

このanimationは動詞animateを名詞化したことば。一方animateの方ですが、これはラテン語のanimaからでたことばです。Animaを辞書で引くと、まず「風の流れ」「息」とあり、「魂」、「いのち」とつづきます。従ってanimateは「生命をふきこむ」ことを意味します。
「語源のたのしみ」


 生命の無い絵に魂を宿らせる事がアニメーションの宿命なのだとすれば、その宿命を動きにおいて実現するいわば「白魔術」的方法論があります。それに対して、ここで取り上げた両作品は、視線の装置であるカメラをハッキングする「黒魔術」において実現しようとしたのではないでしょうか。

 この「黒魔術」がアニメーションにおいてモキュメンタリー的な感性を表現する一つの答えだった。アニメをリアルに感じたいという衝動が、視線のハッキング(設定のすり替え)を生じさせ、映像というシステムそのものを改変させた……というと筆が滑りすぎでしょうが、せぬ所が面白き、と言うこともあるのです。

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