戯言と作品レビューや分析のブログとその時の思いつき。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


■「スポンサー広告」カテゴリの他の記事を読む。

1話、物語のはじまり。水族館で倒れた陽毬は救急車に運ばれ病院で帽子を被って蘇る。
9話では陽毬が倒れ蘇るまでが、幻想として描写されている。

ここでの眞悧せんせい、まじ鬼畜だ。

*

水族館の中にある図書館。陽毬は「カエルくん、東京を救う」という本を探している。
ペンギンマークが砂時計のように合わさった扉を入ると、天井まで届くような巨大な書架が立ち並ぶ異様な空間が待っていた。
司書に扮した眞悧が陽毬の過去を紐解いていく。トリプルH結成前夜、陽毬の運命の人。
最後には、帽子を眞悧にかぶせてもらい、彼女は命を少しだけ延ばされる。

地面が崩れ、ペンギン帽を被った陽毬が虚空に落ちていく。
ペンギン1号と2号が氷付けになって箱に入れられ、ベルトコンベアに乗って流れている。
そこに「カエルくん、東京を救う」を手にしたペンギン3号が箱の中に入る。
するとベルトコンベアの動きが逆転する。
さらには、氷付けのペンギンが入った箱に張られたピングフォースのシールがはがれおちて、ピングループマークになる。
眞悧は「こいつも忘れちゃダメだよ」といって「KIGA APPLE」を渡す。
こどもブロイラーで「運命の人」にもらった林檎と同じものだろうか。

*

ここでの眞悧の行動は何を意味しているのか。
結論を先に言えば、業を背負って徹底的に苦しめ、と。そのために生かす、と。

ここでの眞悧の行動は何を意味しているのか。
結論を先に言えば、業を背負って徹底的に苦しめ、と。そのために生かす、と。


目次
■人の背負った宿命=呪い
■苹果の場合
■ペンギン達が暗示しているもの
■呪いの中にある祝福
■苹果の場合


■人の背負った宿命=呪い
物語の少し先を見てみよう。
冠葉からもらった命の光は燃え尽きて、陽毬は再び命を落とす。
それを救ったのが闇ウサギを引き連れて医者となった、眞悧先生だ。
「林檎」にはアンプルが描かれており、後にそれはアンプルのみで表現される。
この「林檎」によって、眞悧は陽毬の命を救う。


13話では9話と同じ異様な図書館が登場して、眞悧はペンギン帽にこう語りかける。


眞悧「なぜ、高倉陽毬の命を救ったのか?(…)運命っていう概念が人の世界に存在するのか、そのルールが人の生涯を支配しているかどうか、それを確認したいんだ。キミにもそれを確認してほしいんだ。僕と一緒に。そう。二人でピングドラムを探すのさ。」
このセリフの時、「KIGA APPLE」が極端なアップで描かれている。


ピングドラムには幸せな子ども時代を送った人物はほとんど登場しない。
劇中のメタファーを使えば、こどもブロイラーのコンベアの上に乗って「透明な存在」になりかけた人物しか登場しない。


親が犯した犯罪によって友達からいじめられ、芸能界デビューのチャンスを逃す。
親の都合で可愛さを消費されて捨てられる。
親の美意識によって虐待を繰り返される。
親の理想に応えられない自分に押しつぶされる。
血の繋がった兄弟と生き別れになってしまう。
無くなった姉の亡霊に脅かされて空っぽの人生を送る。


運命とは決まったレールの上を走る列車のようなものだ。そのレールが生まれた時に既にしかれているのだとすればどうだろうか。この世に命を受けた時に自分の可能性の多くは決まってしまう。そして、自らの意志で動いているようであっても、結局は定められたレールの上を走ることしかできない。


人が生まれ持っていた時の初期条件に縛られてのたうちまわる様。


人が運命に縛られて苦しむこと。
これを「呪い」と表現してもいいかもしれない。


20話では、晶馬によって子ども時代の回想が描かれる。こどもブロイラーでベルトコンベアに乗せられて「透明な存在」になろうとしている陽毬。彼女を助けようと「KIGA APPLE」を持って晶馬は走る。


こども時代の陽毬は晶馬にこうつぶやく。
陽毬「地上で最初の男と女の話。わたし知ってたよ。二人は罰を受けたんだ。生きるってことは罰なんだね。でも、罰でもしょうちゃんと一緒にいたかった。だから…選ばれたかった……。」


言うまでもなく我々は全て呪われている。たった一人で生まれてくる事はできないのだから。生きる事は苦しみである。


そういった「呪い」を「林檎」は表しているのだろう。




■ペンギン達が暗示しているもの
さて、9話の回想に戻ろう。
物語のはじまりに、陽毬が倒れてから蘇るまでの幻想表現だ。


氷付けになったペンギン達が箱に詰められてベルトコンベアで虚空に投げ出されようとしている。
このベルトコンベアーの幻想描写の直後に、霊安室で物語上最初の「生存戦略~!」と叫ぶシーンが描かれている。なので、ほぼこの幻想描写は、陽毬が霊安室に横たわり残された兄弟が口論をしているシーンに相当するといっていいだろう。


氷付けにされたペンギン達、はどこか陽毬という中心を失ってばらばらになった高倉家を暗示しているように見える。
このペンギン達が、1話で最初に登場した、つまりは物語世界に始めて現れたのはペンギン帽の奇跡の後ではない。陽毬が水族館で倒れる前、今日は陽毬デーなの、とはしゃぐ陽毬を連れて思い出の水族館に遊びに行った時、ゴミ箱からペンギン達が顔を覗かせている。これが最初だ。高倉家の壁に貼られている写真が撮られた場所、父母と兄弟3人で遊びに行った水族館だろう。未だ両親が犯した犯罪は警察には通じず、幸せだった頃の思い出。
加えていえば、冠葉に対応しているペンギン1号が頬に絆創膏を貼っている。21話で明かされたように、この絆創膏は実父を亡くして行き場の無くなった冠葉に対して陽毬が張ってくれたものだ。冠葉が「高倉家」に迎え入れられたその証がペンギン1号には宿っている。


このペンギン達は、血のつながりの無い高倉家にとって、血のつながり以上の絆の深さを表している。
過去の記憶、過去の楽しかった思い出、泣いたり笑いあった記憶。そういった行動の積み重ねがペンギン達には宿っているのだ。
そう考えれば、ペンギン達が物語がいかにシリアスな展開になろうとも、いつでもコミカルに画面を賑やかしている理由もわかろうというものだ。
高倉家としての絆、高倉家として過ごしてきた記憶、ある種のノスタルジーは、現実がいかにシリアスな状況になろうとも裏切らない。


1話、突然現れたペンギン達を疑問に思う晶馬に冠葉はこう言う。
「こいつら、オレ達以外には見えない。」


*


#では、夏芽真砂子のエスメラルダはどう考えるべきだろうか?
#ここで、主要な登場人物の中で高倉家以外の人物は自らのペンギンを持たない事に注目したい。
#そして、高倉家の人間と幼少時代を共に過ごしたのも真砂子だけなのだ。
#より限定して考えれば、ペンギンは冠葉の何らかの特殊能力に起因するのかもしれない。
#とはいえ原因はなんであれ、幼少時代からの記憶や絆を意味する事は変わらないと、私は考えている。


*


■呪いの中にある祝福
1話の陽毬の死によって、ペンギン達は氷付けになった。
そのベルトコンベアのローラーには「こども」という字と、こどもブロイラーのアイコンが描かれている。こども達が乗って「透明な存在」になるように、高倉家の絆も透明になろうとしていた。
しかし、そこに3ちゃんが乗り込む事で、ベルトコンベアは逆流を始める。そして、宅配便になって高倉家に届けられるのだ。
高倉家はよく喧嘩をしている。その度に間をとりもっていたのは陽毬だ。彼女が楽しそうにロールキャベツを作っていた姿を覚えている方も多いと思う。
晶馬が陽毬を救い、陽毬が冠葉を救った。という関係の中心に陽毬はいたのだ。


#「氷付けのペンギンが入った箱に張られたピングフォースのシールがはがれおちて、ピングループマークになる。」事の意味は、未だよくつかめていない。
#ただ、黒いペンギンマークはおそらくは「運命の至る場所」を示しているのではないかと考えている。
#「運命の至る場所」がはがれおちた。もう少し物語か考察が進めば、この意味もわかるだろう。


だが、眞悧は「こいつも忘れちゃダメだよ」といって「KIGA APPLE」を渡す。
それは、幸せな高倉家を縛り付けている呪いだ。
両親が関与していた「企鵝の会」。両親が警察に指名手配をされて幸せだった家族はばらばらになる。兄弟だけで結束して幸せな家族を取り戻したとしても、陽毬を救う為に冠葉は「企鵝の会」の犯罪に手を貸しまたもやばらばらになろうとしている。
眞悧はペンギン達だけを高倉家に送りつける事はしなかった。彼らを苦しめ、崩壊を招くだろう「運命」=「呪い」をも一緒に入れたのだ。


もう一度、眞悧の言葉を引用しておこう。


眞悧「なぜ、高倉陽毬の命を救ったのか?(…)運命っていう概念が人の世界に存在するのか、そのルールが人の生涯を支配しているかどうか、それを確認したいんだ。キミにもそれを確認してほしいんだ。僕と一緒に。そう。二人でピングドラムを探すのさ。」


だが、ここで考え直して欲しい。
眞悧がいなければ、ピングドラムは1話で終わっていた。陽毬が死んで兄弟はばらばらになって。それで物語は終わりだ。
95年の事件を起こしたピングフォースが無ければ彼らを縛り付ける「呪い」も無かっただろうが、高倉家として出会う事も無くあの幸せな食卓も存在しなかった。
生きる事は苦しみだが、その中には楽しい事だってある。


彼らの苦しみの源泉は、同時に彼らの幸福の源泉ともなっている。
作品の底部に流れるペンギン達のコミカルな動作を思いだそう。
現実に空いた深い裂け目にあらがって、彼らが、この「アニメ」を成立させている。


「呪い」を「祝福」されたものとして生きる事。


これは、ピングドラムという作品を通じて感じ取ったテーマ性だ。




冠葉は自ら、高倉家につきまとった新聞記者の殺人を指示するという罪を犯した。これをもってハッピーエンドを否定する声もある。冠葉は運命に呪われている。だが、その呪いを祝福されたものとして生きる事は可能なのではないか?私は、彼らがいわば「業の肯定」をできるかどうかがこれから残された3話で焦点になるのではないかと考えている。これは、晶馬は家族への憎しみを捨てられるかという問いに、後者は冠葉が誰かを救うために誰かを犠牲にするという呪いから離れられるかという問いに答えられるかという事でもある。


■苹果の場合
この「呪い」を「祝福」として生きる可能性は、苹果によって既に示されている。


苹果ちゃんは、桃果の影として生きる事を強いられた。


苹果は、桃果の日記をどこからか持ちだしてきて自分の運命にしていた。苹果ちゃんは自分の内側に何も持っていない空虚な存在だった。自分の妄想に偏執するならまだいい。他者の欲望を自らの欲望として偽装して生きている。空っぽでそこには誰かのノスタルジーが入っていてギリギリ維持できる。ストーカーが自らの欲望を他者に押し付ける行為なのだと理解すれば、実は彼女のとっている行動は真逆になる。
苹果の生まれた日は桃果の亡くなった日でもある。毎年毎年やってくる自らの誕生を祝う日が、死者への弔いに捧げられている。苹果にとってみれば自己否定のための儀式でしかない。パパの「いつまでも誕生日がカレーの日だとかわいそうだろう!」という叫びはそんな娘を思っての事だろう。(この2段落は前のエントリを再構成)


ピングドラムの前半は苹果の「運命日記」を中心に話が進む。苹果はこの日記を他人に触れる事はおろか、見せる事すらも嫌がっていた。
だけれど、苹果を助けるために怪我を負い入院した晶馬が真砂子に人質にとられた時、彼女は病院の屋上からこの日記を投げ捨てた。この瞬間に、苹果は桃果として生きる事を辞めたのだ。苹果は桃果の恋人ではなく、自分の好きな人を好きになろうと、人生ではじめて思った。そこでの迷いや葛藤は晶馬に対するデコピンやビンタで表現しているのが、苹果ちゃんらしい。


そして桃果は、世界を救う為に、眞悧のいた世界から今の世界に世界線を切り替える為に犠牲になったのだろうという事が明らかになってくる。自己犠牲による運命の乗換と桃果の死。苹果を束縛していた桃果の死という「呪い」は、桃果が苹果に残してくれた「祝福」であったのだ。桃果は苹果に世界を残してあげた。もしかしたら、苹果が生き残る可能性を与えてくれたのかも知れない。


決して、「呪い」が消滅して「祝福」に変わったのではない。呪いは呪いのままで存在している。「呪い」が「祝福」になることなんてできるわけがない。そんなに簡単に解決できるものは、「呪い」ではありえない。だが、「呪い」を「祝福」されたものとして生きる事はできるのではないだろうか。

11.12.9 03時 加筆

 RSSリーダーで購読する


関連記事

■関連エントリ
カテゴリ:評論
タグ: ピングドラム
次のエントリ;桃果=帽子では割り切れないプリクリ/「運命の至る場所」って?(ピンドラ考察)
前のエントリ;運命日記の謎と苹果の想い ピングドラムを読み解く その2



管理者にだけ表示を許可する
http://nipponia.blog44.fc2.com/tb.php/223-e9408d8b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
オークリー  【2013/07/03 Wed】
「呪い」を「祝福」として生きること ピングドラム考察 ::クリティカルヒット
[ オークリー ]
クロムハーツ  【2013/10/24 Thu】
私です しない 特定 場所 あなたはしているあなたインフォを取得、 しかし 偉大トピック。 I なければならない しばらく 見つける もっとまたは考え出すもっと。 素晴らしいの| ありがとうございますあなたに感謝 情報 私がいた の検索でこの情報 。
[ クロムハーツ ]
クロムハーツ メガネ  【2013/10/31 Thu】
優れた を公表非常に有益。なぜ私は思ったんだけど、私は熟考かしら 反対 この| |この分野の専門家が専門家は いないしない 。あなたなければならない |あなたの文章 PROCEED続行を。 私はね 確認、あなたがた 偉大読者の基盤はすでに。
[ クロムハーツ メガネ ]
ニューバランス 574  【2013/11/09 Sat】
ありがとう 優れた極上の情報共有のために。あなたのウェブサイト |クール非常にそうです。 私は詳細に感銘を受けているあなたが持っているこれにブログ 。をそれは明らかにどのようにうまくあなた感知この主題を。ブックマークされたこれはウェブページ |記事、 より余分のために戻ってくるだろう。あなた、私の友人 、 ROCK 。私が見つけた単に 情報 |とだけ ができなかった出くわす私はすでにどこで...
[ ニューバランス 574 ]
それ¡ | S 実際に A 偉大なと役立つの一部情報 。 私¡ 幸せ あなたその この共有|私たちとの情報を情報 。してください滞在私たち最新のこのように。共有のために| おかげであなたに感謝し 。
[ ニューバランス スニーカー ]
-  【2013/11/19 Tue】
管理人の承認後に表示されます
[ ]
// HOME // 
Powered By FC2ブログ. copyright © 2005 クリティカルヒット all rights reserved.
プロフィール

クリティカルヒット

Author:クリティカルヒット
気がつけばアニメとかニコ動のことばかり書いてます。更新頻度はかなり低いので、よろしければTwitterなどにもアクセス下さい。

メール:criticalhit.blog[at]gmail.com
タンブラ
Twitter

Twitter

Twitter < > Reload

RSSリーダーで購読
最近の記事
タグ
カテゴリ
人気エントリ

最近のコメント
最近のトラックバック
カレンダー

10 ≪│2017/11│≫ 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

全ての記事を表示する
現在の閲覧者数:
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。