戯言と作品レビューや分析のブログとその時の思いつき。

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 『涼宮ハルヒの憂鬱』は尋常では無い程、作りこまれている。ネット=ユーザーの空気を読んだネタ振りの巧みさについては後述するが、そもそもの基礎体力の高さも忘れてはならない。

 設定や世界観の作りこみというのは、ヒットする作品の最低条件であると思う。こればかりはマーケティングではどうにもならないと信じたい。
 『サクラ大戦』の広井王子がゲームセンター「CX」でこう語っていた。ジャンルはゲームとアニメと異なるんだが、物語産業として共有する部分も多いと思うので紹介する。

(朝倉涼子の呪文の検証動画、8.24に追加)

 「サクラ大戦3の場合だったら、パリに住んでいる日本人を雇って、パリがどう変わっていったか、大正時代・一九二〇年代の広告、そういった資料をパリの国立図書館から全部こちらに送ってもらう。美術班からシナリオ班まで空気を感じるために海外に行く。二年くらいかかって一本を作る。8割は捨てるけれど、調べる過程で自分達がその世界に住んでいるような気持ちになる事が大事。」

 涼宮ハルヒの盛り上がりは、こういった基礎体力の上に成り立っている。

■ユーザーを刺激した京アニのボケ


 『涼宮ハルヒの憂鬱』のテンションの高い作劇を見ていると、世界観やキャラクター・シナリオといった作品の作りこみも相当に行われているだろう事がうかがえる。
 そういった基礎的な体力のタフさに加えて、ファンのコミュニティを刺激する要素がやたらに作品の中に埋め込まれているのである。
 こういう話題喚起的なものを、ボケとツッコミに例えて京アニのボケとでも言っておく。

 京アニのボケの中には、意図的に仕組んだものもあるだろうし、現場にいるスタッフ達が悪ノリをして作りこんでいったのかもしれない。そういった遊びをこれでもかと入れていくというカルチャーがあったのかもしれない。アニメーターの個性が最大限に活かされるという点で、テレビ版「うる星やつら」の演出とどこか似ているかもしれない。

 まず、京アニのボケの代表的な例として、涼宮ハルヒの憂鬱 オフィシャルサイトを取上げてみる(知らない人はまず涼宮ハルヒの憂鬱 オフィシャルサイトに行ってみてください。)

 これは、どこからどう見ても、オフィシャルサイトの作りではない。実はこのオフィシャルサイトは、涼宮ハルヒが団長を務めるSOS団が本編の中で作ったホームページなのである。

 おそらくユーザーは「今回の放送の演出は誰なのか知りたいな~」等と考えてオフィシャルサイトに訪れるわけである。そこで、初めてこの事実に遭遇して、頭の中がはてなで一杯になる。しばらく考えて「もしかして劇中で作らされていたやつか」と膝を打つ。
 これに気がついてしまったら、2ちゃんねるや自分のBLOGで、このボケに対するツッコミをせざるを得ない。こういった、突っ込まざるを得ない絶妙なボケを京アニはしてくるわけである。

■京アニのネタ振りをいくつか紹介


 その他にもいくつか挙げてみる。

・オフィシャルサイトのさらに小技
 「悠々日記」さんが指摘しているので紹介。
 第7回の放送に合わせてカウンタの数字が変更されるしかも、普段は見えないコメントにデータ修正 長門有希とある。
 隠しページに朝比奈みくる写真館原作で無理やり赤裸々な写真を公開されたみくるを気づかってウェブからは消したのだが、保存しておいたという主人公の葛藤。
 判りにくい更新視聴者への挑戦のよう。

・対カマドウマ戦でのセルフパロディ
 第7話「ミステリック・サイン」で、長門有希とカマドウマが戦うシーン。そこで、京都アニメーションがかつて制作した『フルメタル・パニック』の映像エフェクトを引用している。
 比較した映像がyoutubeにupされている(ローゼンメイデンも混じってますが)。
http://www.youtube.com/watch?v=FspPUGp87sA

・プログラムをハックするシーンで実際に作動するコードを使用
「いつきログ」さんで知りました。該当記事はこちら
 コンピュータ研と因縁がある我らがSOS団であるが、対戦シミュレーションゲームで雌雄を決する事になって、何故か映像上ではリアルSF表現が展開されて…という回での1幕。
 わけあって、プログラムをハックするのだが、そこで画面にちらっと移るソースコードがなんと、コンパイル可能だというのだ。こんな細かい所に仕込む方も凄いし、ツッコミを入れられる人がいるというのも凄い。しかも、コンパイルして実行すると、アニメ本編と同じダイアログが表示される!

・同じ回での、長門がちょっとづつパソコンに慣れていくという描写
 これもすごく丁寧な演出で溜息が出る。
http://www.youtube.com/watch?v=uoQ1LJCBQuc

・朝倉涼子の呪文を逆再生すると「キョン君のこと好きなんでしょ。分かってるくせに」
「Syu's quiz blog」さんで紹介されていた2ちゃんのスレで知った。参照元はこちら。
 これは、朝倉涼子というキャラクターを掘り下げる意味でも重要。youtubeに検証動画→
(8.24に追加)

・七夕ラプソディ
これも「悠々日記」さんより。
小憎い演出

……と、挙げていけばキリが無いので、ここら辺にする。

■ネット上の空気を読む事の難しさ


 「京アニがボケてファンが突っ込む。舞台はWeb2.0(仮)」と最初に書いた。次に、ボケとツッコミの具体例を見てきたわけだが、この空気の読み方が絶妙である。

 安易に真似をするとやけどをするというのはいうまでもない。このエントリを書いている最中にドコモがmixiでやらかした件がネットを書け巡った。

 いくら企業がしかけようとしても、この程度のものならば、簡単に炎上してしまうという一例だろう。例え話を続けると、寒いボケだけで、ツッコミが不在の漫才なんて誰がみたいだろうか。物笑いのネタになって終わるだけである。

 良い舞台をつくるには、ユーザーとの肌感覚の共有という事が重要だ。素晴らしいものは伝達する。善いものは伝達するというのは、安易というか、限定的であると思う。

 ここらあたりは、Musashi Gun道は素晴らしいからネット上をかけめぐったのか?と、書いたとおりである(エントリはこちら)。素晴らしい作品だからではなく、話題喚起的であるからネットで話題になる。

 ツッコミ=ユーザーの空気を読んだボケこそが求められている。ハルヒの製作陣が凄いのは、こういったことを狙い済ましてやった事である。

■「舞台」の上にユーザーも立っていた


 こういうやり取りの前提を用意したのは、確かにWeb2.0(仮)的なインターネット環境なのかもしれない。映像に仕込まれたネタを発見したときYouTubeが無いと不便だろうし、Blogや2ちゃんねるでみんなでわいわいやりながらハルヒのツッコミどころを探していくのは楽しそうだ。そういった意味では、テレビが必死になって仕掛けていたワールドカップのすぐ横で、Webっぽいメディアイベントがよっぽどすごい祭りになっていたともいえる。

 けど、この「舞台」だけに注目してしまうのでは、ハルヒの面白さの半分も伝わらない気が個人的にはしている。
 舞台というのは、ボケだけ、ツッコミだけで作る者ではなくて、ボケがあってツッコミがあってそれに拍手をする観客がいて初めて成立する。

 例えば、ツッコミ所探しが面白くもなんともない辛い作業だったら、そんなものがネットで自発的に拡がっていくわけが無い。

 ハルヒを巡って、インターネットのブログや巨大掲示板などのメディアで色々とツッコミをしていた人は、観客席にいるのではなくて舞台の上に立っているのではないだろうか。

 エヴァンゲリオンも謎解きが盛り上がった。そこには「謎を出す人」と「謎を解く人」との間には境界線が引かれていたような気がする。それは、一緒に舞台に上がっているという感覚ではない。エヴァの場合は、謎を見せないままハッタリを効かせて演出を進めていった。その謎の解釈自体を巡ってのコミュニケーションが起こった。
 ハルヒの場合は、そうではなくて、超監督ハルヒが用意する舞台の上でみんながコミュニケーションをしているんじゃないかという感じがしている。

 次のエントリでは、ちょっと回り道をしてハルヒという物語が持つメタフィクション性について書きたい。このメタフィクション性が、ネット上でのコミュニケーションの効果について強烈な援護射撃をした気がするのだ。
 その上で、この舞台の何が面白いのか?について自分なりにまとめるエントリを書きたい(近日公開予定。。)。

続く(昨日の夜からずっと書いているのでちょっと飯休憩)



全体的に修正+最後のパートは全面的に書換(7.24)。

■目次


涼宮ハルヒの分析Ⅰ
涼宮ハルヒの分析Ⅱ 京アニがボケてファンが突っ込む。舞台はWeb2.0(仮)
涼宮ハルヒの分析Ⅲ エンターテイメント/メタフィクション
涼宮ハルヒの分析Ⅳ 意味付け装置としてのネット
涼宮ハルヒの分析Ⅴ-1 京アニ演出の巧さ、世界の裂け目がもたらすめまいについて
涼宮ハルヒの分析Ⅴ-2 メディア・ギミック・イリュージョン テレビ版ハルヒとDVD版ハルヒの違いが持つ意味
涼宮ハルヒの分析Ⅵ-1 欲望投影システムとしてのハルヒ エヴァ・ビューティフルドリマーからの世界の肯定
涼宮ハルヒの分析Ⅵ-2 涼宮ハルヒの「憂鬱」について

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■関連エントリ
カテゴリ:評論
タグ: 涼宮ハルヒ アニメ 目次::涼宮ハルヒの分析
次のエントリ;涼宮ハルヒの分析Ⅲ エンターテイメント/メタフィクション
前のエントリ;涼宮ハルヒの分析�



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