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 株式投資の古典的入門書『ウォール街のランダム・ウォーカー』によれば、猿がダーツを投げて選んだ株を買うことと、財務諸表やチャートを分析して選んだ株を買うことの間に違いは無い。一見すると、滅茶苦茶なのだが、根拠となっているのは株価の予測は不可能という事だ。
 株価予測には、財務諸表などを手がかりにして会社の将来予測を行うファンダメンタル分析と、株式売買の足跡=チャートから将来の値動きを予測するテクニカル分析がある。

 ファンダメンタル分析は、将来に予測される株価を現在に還元して割安ならば買う。株価収益率という価がある。3年後に利益が10倍になるっぽい会社と、利益が半分になるっぽい会社があれば、それは前者を買うという話。しかし、人間の予測能力は、現実の常に下であるという結果があらわれている。例えば、アナリストが予測する株の平均値は市場平均値よりも下だし、同じアナリストが継続的に予測を当て続けるのも難しい。結局は将来予測を行う為の思考法が時代にあっているかあっていないかという丁半博打に過ぎない。社会科学の悲しい宿命で、統計情報という過去のデータしか扱えないので完全な予測はそもそも不可能なのである。
 テクニカル分析は、市場には記憶があるとする考え方だ。しばらくあがっている株は上昇トレンドにのっかってあがり続けるとする。確かに、群衆心理のようなものを仮定すればありえる話であり、実際に行動ファイナンスという学問分野があるそうである。けれど、過去の取引データを使ってコンピュータでシミュレーションをやってみたら、見事にどのテクニカル指標も市場平均を下回る。あとは、オカルティックなチャート信者が残るだけだと、『ランダム・ウォーク』の著者はいうのであった。面白いのはテクニカルの教祖のような人がたまに現れる所で、株価の上昇と下落を1度あてただけではただの運のいいやつだが、2度3度とあてると、彼が使った理由がもっともらしく正当化されてくる。そして、ファンドマネージャーを任されたり、大勢の信者が生まれた段階で市場に裏切られる。この繰り返しなのである。

 この主要な2つの分析手法だけではなく、これが有効であるという新説も時折表れる。また、実際にその説が市場平均よりも高いリターンをあげる事もある。しかし、その有効性が知れ渡るや否や、皆がマネをしてその手法の有効性は失われる。あとは、手数料や売買にかかる税金の分だけ、損をするという案配。

 最もベースにあるのは市場は効率的であるとする考え方で、良いニュースも悪いニュースも即時に株価に反映されるという考え方だ。良いニュースがあれば株価は上がるし、悪いニュースがあれば株価は下がる。しかし、いつそのニュースがやってくるかは予測不可能だ。予測可能なら、その瞬間に株価に織り込まれる。

 従って何も考えずに、市場指数で運用している投資信託などを購入するのが、長期的に見て損を必要以上にしない投資スタイルであるとする。もっとも、この本の著者が面白いのは、株で一財産築きたいという山っけを完全に否定しない所で、それがこの本の魅力にもなっている。

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