ネットで話題。9割以上が涙した。アマゾンで売れている。などの売り文句に引かれて、サイトの方の文書を読んでみた(→
■)。
スルーしようかとも思ったのだけど、ベストセラーランキングを突っ走っていたり、いじめで痛ましい事件が起こったりしたのを見て、この本に感じた違和感をまとめてみる。
一言でいえば、主張自体は素晴らしいことだと思うのだが、その持っていき方はどうかと思った。という事になる。
こういった筋立ての模様。
・一人の主婦がいる。
・息子がいじめられている。
・悩む。
・とある人と知り合っていろいろと話す。
・その課程で、自分自身が父や夫のことを憎んでいる事に気が付く。
・涙を流してそれを許す。成長した主婦。
・そうしたら、息子のいじめが解決されました。
この冗談とも思える飛躍については筆者も認識していて、途中で、筆者がこの話って宗教っぽいよね。けど、これには心理学的な裏づけがあるのです!と堂々と書いてある。
へぇ。と思って参考URLを辿ってみたら。
そこで紹介されてる心理学って「ユングのシンクロシニティ」だ。
私は、ここで茶を吹いた。
それを心理学的な裏づけであるとする事に、ユング派以外の日本の心理学者は違和感を表明するのではないだろうか。ユング派ですら評価が分かれる気はする。そもそも、精神分析と心理学は方法論が全く違う。
まずこの話は「ええ話」である。もう感動巨編だと言われたら、私はいかにもこれが重要な真理であるかを強調するような演出に萎えてしまったが、プロットレベルでは素朴に感動巨編だと思う。
「ええ話」を「全ての問題解決が可能な方法」と、特殊事例を一般法則に押し切ってしまう。それを支えているのがユングという非常に文学的なものだ。そこらへんにズルさを感じる。
「鏡の法則」とは「成功の法則」のことである。
実は、人生で起こるどんな問題も、何か大切なことを気づかせてくれるために起こるんです。つまり偶然起こるのではなくて、起こるべくして必然的に起こるんです。ということは、自分に解決できない問題は決して起こらないのです。起きる問題は、すべて自分が解決できるから起きる
経営者が感動して部下に読ませたがったりするらしいが、「自分に解決できない問題は決して起こらない」という気構えでなければ仕事はできんという主張は確かにそうだろう。
ただ、それを支えてるのは鏡の法則じゃない気がする。
まぁ、それだけだったらコーチング・オカルト風味美味しゅう御座いました、という事でいいんだけど、もう一つ問題だと思ったのは、解決不可能な問題を解決可能な問題だとして頑張る事は、問題解決者を時として非常に辛い状態におくだろう事だ。
鏡の法則の主張とは反対に、現実に起こる問題は著しく偶然かつ自分の手の届き様がないところで起こるように見える。だから、もしも本当に「自分に解決できない問題は決して起こらない」「何か大切なこと」が隠されているのであれば、なんと素晴らしい世界だろうか。 だから、この本を読んで溜飲を下げる人がいるのもすごくよくわかる。
先に自殺した少年はクラス中の生徒によってたかってパンツを脱がされたりしていたわけだが、そんなものに多分意味は無い。別にその事実は、何か大切なことを伝えるために起こるわけじゃない。その少年がどうだかは知らないが、一般的に頑張っても頑張ってもどうしようもないからどんどんと淵に追い詰められていくんじゃないだろうか。
自分の経験に照らしてみても「いじめ」も「なんでウチの子」が「なんで私が」といった類の問題だ。もちろん、いじめ問題だけじゃなくて、どうしようもない問題というのは起こり得る。某哲学者が「語り得ない問題については沈黙せねばならない」という言葉を残しているが、問題状況のうち自らの関与によってはどうしようもできない部分を除く事は問題解決の第一歩なのではないだろうか。
勿論、なんでもかんでも自分には出来ないとクダを撒くこととは区別しなきゃいけない。「やる気」は大事だけど、「やる気」だけではどうしようもならない事も世の中にはある。
私は、現実と物語を区別して物語の中に自分を溶け込ませる事は区別がそこにある以上悪いことではないと思っているのだが、鏡の法則のように、現実を物語化して良しとしてしまう事には、忌避の気持ちが起こってしまう。
私に将来生まれるかもしれない子供がいじめられていたとして、子供のためと思って、コーチングを受けている暇があったら、いじめ問題を専門に取り扱っている人に相談するとか、子供と少しでも話しあいを持つ事の方が大事なんじゃないかと、素朴に思う。
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